ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

賞月観星 Pleasing Goddess HR 8x32 WP

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2019年5月発売

Pleasing Goddess 8x32

まとめ


pros
・Swarovski CL Brightを意識したコンパクト・軽量デザイン
・マグネシウム鏡体によるソリッドなデザインと堅牢感
・Pleasing HRより品質の高い外装ラバー
・良質な対物、接眼レンズコーティング
・良好な縦色収差補正
・3cm機としては水準以上の高い解像力
・改善されたカラーバランスと色彩パフォーマンス
・Pleasingに見られた視野周辺にかけての強い非点収差やコマは改善
・内面反射処理に改善がみられ、特にインナーフォーカスレンズユニット内壁に施条と塗装がされた
・ナチュラルな歪曲補正(軽微な糸巻き)でグローブエフェクトを感じない

cons
・位相補正コーティングは従来Pleasingと同等で、Zeiss Swarovski Leica Nikonなどの高級機の完璧なP補正には劣るレベル
・視野周辺にかけ内向きの強い像面湾曲がある(半径50%より。ただし年齢により補正可能かも)
・近接最短距離がカタログ値(2m)とあるが、実機は2.5-2.8m付近とずれがある
・内面反射対策にまだ改善余地があり、プリズム側面およびIFユニットのリングからの反射によるクレセントグレアが状況によりかなり出る。
 また、本当にわずかなベーリンググレアが常に視野の全体に被っており御三家高級機の素晴らしい視野のヌケにはまだまだ及ばない。(国内メーカー 2-5万クラスと同等レベル)
・ケース、ストラップなど標準的な品質

開封して本機を触って、まずはあまりのCL Brightへのオマージュぶりに笑ってしまった。
値段から考えると素晴らしい健闘ぶりだと感じた。

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外観
MONARCH HGやCL Brightの凝縮したマグネシウムボディ感をパッと見では感じられる。細かくみると、ダイキャストの粒の荒さが塗装越しに見えたりする。
外装ラバーの感触や親指ディンプルなどの意匠をCL Brightに似せようとした努力が見られる。
全体的に値段を考えれば頑張っており、所有欲をある程度は煽ってくれる。

機構・構造
鏡筒内のインナーフォーカスレンズユニットが前後する方式だが、前Pleasing 6.5x32がIFユニット筒と鏡筒内面全周が100%グリスで滑るのに対し
本機は一部にグリスが塗られているのみである。しかしフォーカスを使用すればするほどグリスが内面に塗り広がり、あまり気持ちの良い状態ではない。
そして、塗り広がったグリスが後に新たな内面反射をおこしてしまう。このあたりが新興メーカーの限界、実際に使用する事を考えた設計というかノウハウ・経験の少なさを感じてしまう。


内面反射対策については、フォーカスレンズ群にねじ切りがされ、この部分は光りにくくなる対策がされた。しかし、対物レンズ枠付近とフォーカスレンズ枠のごく一部が斜めからの強い光でクレセントグレアを生じる。また、プリズム側面に保持用接着された面がかなり光ってしまい、前Pleasingより目立つ。
ダハプリズムを対物側から覗いた際、前Pleasingのプリズムよりも斜めの角度から入る光に対して散乱光を生じやすいと感じた。この事が実視で感じる違和感につながっているかもしれない。

その後継続使用をしたが、前Pleasingの特徴的な見え方の印象と本機への期待が大き過ぎたこともあり、何か見え方に特徴が無いと常に感じてしまう。同価格帯の双眼鏡の中では無論及第の光学パフォーマンスではあるのに。

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