ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

SWAROVSKI CL Pocket 8x25 趣味性の高い愛玩的双眼鏡

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2021年 新発売された CL Pocket elegant 25は、外装の優美さがさらに増し、新たな色としてアンスラサイト(無煙炭)が追加されたことが最初に目に付くところです。

 

対 Zeiss Victory Pocket (FLレンズ採用の25mm)という後出の強力な好敵手に対し、スワロフスキーがどう駒を動かすのか注目していました。具体的にはアイピースの広視界化や、最短フォーカスの改善ですが、実際には「反応しなかった」どころか、ラグジュアリー路線として価格政策も含め独自の方向に舵を切ったようです。

 

 

新型CL Pocketを現時点では触れていませんが、光学デザインは同一ということで、2017年の製造個体であるCl Pocketについての覚書を掲載したいと思います。

 

 

公式データシートの記載有無も含めた、前CL Pocket 25と新型Elegantの違いをホビーズワールドさんがサイトに解説していて、その詳細がとても参考になります。ぜひ参照ください。

 

まず Victory Pocketと大きく違うのは、収納時に小型化を最優先させたダブルヒンジによる折り畳み構造です。

非常にコンパクトで収まりの良い縦型ケースが付属し、このケースに本体を納める時はかなりタイトなのですが、その分、収納後の見た目はスマートでズボンのベルトなどに通すもよし、通勤カバンに入れても全く嵩張りません。 そのトレードオフとして、ダブルヒンジを目幅の調整を2軸動かしてセットを行うのに手間取るということが生じます。また、観察中にヒンジのどちらかを無意識に触って動きやすい欠点があります。(新型Elegantでは固く動きにくい改善がされているとの情報あり)

一方、Victory Pocketは片側に偏らせた1ヒンジでポジション再現が素早く、その偏らせたデザイン故に片手の掌に包み込むように安定して保持できるという利点があります。収納時はCLより大きいことと、付属のデザイン上ちょっと冴えないずんぐりしたケースと合わせてさらに嵩張る印象があります。このおむすび形ケースのデザインセンスはちょっとどうかと思います。

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CL Pocketの操作性ですが、フォーカスノブは小さいが軽くスムースに回転します。 

 

最短距離は計測はしていませんが、公称2.5mから数十cmは近く行きますがあまり使い勝手は良くありません。この点はVictoryに譲ります。

 

CL Pocketの購入については、2014年の個体を一度過去試用し、その時は斜入光によるクレセントグレアや内面反射があった為、購入にいたりませんでした。

 

購入したその後の個体はこのあたりがどうも改良されているようで、グレアや反射がが激減していました。

CL Pocket の像質は具体的にHDガラスの使用を謳ってはいませんが、中心色収差はほぼ検知できないレベルに抑えています。倍率収差は軽度にありますが見かけ視界が広くない事もあり、周辺にかけては穏やかです。直線歪曲収差を綺麗に補正してあり像面湾曲も軽微、トータルで周辺像は良好です。 星を見るレベルにおいては際周辺にて非点収差とコマはあるといえばありますが、それよりも25mmは30-32mmと比べて星を見る光量に口径の数字以上の隔たりがあるため、そこまで星像に言及する意義がないような気もします。

 

おそらくSWAROVISIONと同じく接眼レンズ側に非球面が使用されていると勝手に想像しています。その代償として最周辺像における月などの円形物が視野外方向に不自然に圧縮する現象としてはでていますが、見かけ視界の狭さからその範囲が非常に狭い為、グローブエフェクトととしてパンニングをした時に視野が回るように見える弊害にまでは幸い至っていないです。 良好なカラーバランスと色彩豊かで透明感のある見え方をし、対物側のコーティングは最新のSWAROVISION ELと似た反射光色をしています。 

 

Victory pocket 8x25 との比較では見かけ視界 60度 vs CL 約53度と視野が狭いのですが、その分周辺像まで安定してみえる面積自体は広いです。また、コントラストと色彩の濃さはCLの方が強く見た目以上の演色効果があります。内面反射の少なさもVictoryよりも良好で、Victoryは強い光源にとてもセンシティブです。見え方の味付けはZeissとあきらかに差があり、Victoryは日本製という先入観はありますが、Dialyt類 Zeissからの流れとはやはり違うように見えます。ただし中心解像力はCLよりも上でVictory Pocketはかなり結像力とエッジのキレは高いです。

 

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最後に20-25mm機のまとめという感じになってしまいますが。

星の部分でも書きましたが、3cm機と比べると日中でも日陰や屋内などで視野の暗さを感じはじめます。また、軽量ゆえ手ぶれが大きく、持ち方などに工夫が必要かもしれません。

 

CL Pocket、Victory Pocket, そして Kowa Genesis 22 (実は一瞬だけ所有していたことがあります。これも好きな機種でしたが、初期不良で返品・・) このあたりはいずれもデザインと携行性が最優先され、実際に出張やカメラ 機材を優先する際に持ち出しましたが、暗い、解像力や像質に今一歩ということで 3cm機に一気に気持ちが傾いた経緯があります。

 

高級ポケット機は、対コストも考えた際のエントリー機として楽しむのか、はたまた中大口径機を持たれている方のお洒落なサブとするのか、目的の明確化を購入前にされると良いかと思います。