今回はあまり冷静にレビューできません。お好きな方は是非ともお求めください。
終わり。
超まとめ
・デザイン性優先でありつつも使用感や操作の快適さに一切影響なし。
・光学性能はこのクラスでトップクラス
・見て持って、所有する喜びに満ち溢れた製品
・シリアスな実用とした場合、用途により制限がある(口径による明るさ、最短距離)
前回のインプレッションにも書きましたが、90年代に巻き起こった銀塩フイルムの高級コンパクトカメラブームをリアルで経験し、
1950-1960年代の技術と物量を本気で投入して作られた Leica, Zeiss, Rollei, Voigtlander,Nikonなどのクラシックカメラに遡って衝撃を受けた当方としては、その後のデジタル化であまり心底揺さぶられるような心躍る製品に出会えていないという。
双眼鏡もしかりです。唯一コンパクト双眼鏡ではNIkonの5x15Dが琴線をかすめたかもしれません。
その真意はテクノロジーの本質的な進化とは別の、物や道具に対する愛着や製作者への畏敬の念とでもいいますか、要は伝統工芸品を愛でるような感覚とそれへの渇望でしょうか。
屋外の森林公園で使用しました。この時期、野鳥はメジロやヒヨドリばかりです。
7倍は鳥の詳細を見つめるのには確かに少々物足りない部分はあります。
しかし、小型軽量の利点とあわせて以下のケースが適合するのではないかと思います。
・首掛けで重さの負担なく自然観察と合わせて気軽に使用する用途
・野鳥撮影用の長焦点レンズとカメラとの組み合わせ
・スコープや他の大口径双眼鏡と併用し、見つけた対象物を引き継ぐ「ファインダー」的役割
フォーカスノブは軽く1本指で軽快に迅速に合わせられます。
フォーカスを回す人差し指とは反対の手の人差し指を、引き出した両アイカップの上に水平に添えると、私の場合ちょうど額の下に指があたり「擬似ヘッドレスト」になり安定します。 このテクニックはHbaicht 8x30やNikon 8x30EIIにも使用できました。(裸眼推奨)
Swarovski全般にその傾向がありますが、7x21は特に前後のピントの深度が深く、背景ボケも崩れなく何がそこにあるのかが非常にわかりやすいです。
前後空間の奥行きと視野全体の透明感が高いこともあり、独自の「素通し感」が味わえます。中心像の切れ味もなかなかのものです。
特筆すべきは良像範囲の広さです。見かけ視野は広視界タイプでは(旧基準 見かけ視界54度)ありませんが、その視野周辺までほとんど像の崩れがないのです。
もちろんELやNL Pureのような中心から周辺までピリピリとした時に緊張を強いるような解像感ではありませんが、20mmの機種でこのレベルは素晴らしいと思います。
また、アイポイントに対して前後および平行(上下左右)の眼の位置にとても寛容でのぞきやすいことも特徴です。
像の色味は僅かな「黄僅かな赤」を感じる時がありますが、偏り自体はSLC8x56HDよりもニュートラルです。
晴天の青空を見ても色調をスポイルすることはありませんし、白い雲の輝度の高い部分から影の部分まで綺麗に描出します。
強いて言いますと、諧調再現のハイライト上部分が若干早く飽和した見え方をします。
色の再現や透明感、VibrantさがSawarovskiの味わいですがそののエッセンスは十分楽しめ、コントラストがありコクのあるヨーロッパ的画調を持つSLCの系譜も引き継いでいます。
木立の半逆光でのグレアは思ったほど出ず、暗がりの樹木の幹に現れるクレセントグレアはポロプリズム 機よりも良好です。
完全逆光で太陽が視野30-40度で入る場合は全体にグレア・フレアがでます。光っているのは対物レンズ枠とプリズム側面部分で、おそらくプリズム側面の反射防止塗装はされていないと思います。日中の使用においては明るさは十分でした。視野周辺にかけて倍率色収差が少し目立ちますが実際に観察している際は視野全体が整った象の印象があるためさほど気になりません。
夜間の星空用途で
Curioは像面湾曲や非点収差・コマ収差が周辺までとても少なく、ほぼ視野周辺まで点像を保っています。これには最初とても驚きました。
大口径のSLC 56mmや42mmではコマ収差や非点収差が軽微ながらも見られ、こういったクラシックな見え方を嫌う星屋さんが多いのも事実です。
その点ではうるさ方にも満足できる星像だと思います。ただし、星・夜間では21mm口径の明るさの限界があり、視野の暗さをかなり感じます。
星座の配列を流して確認するような用途にしてもやはり個人的には最低でも口径30mmは必要だと思います。
美術館
川瀬巴水の版画展を鑑賞しました。五藤GT-M518単眼鏡と併用してみました。この2本は対物レンズのコーティング色といいサイズ感といい、どこか似ています。
実際の見え方はGT-M518よりもCL Curioの方が周辺像が圧倒的に良好ですが、薄暗い照明下の使用では視野の明るさに違いがあり、GT-M518の方が明るくかつ
至近距離に展示物がある場合は寄れるので今回はCL Curioの出番があまりありませんでした。
展示物が離れた距離にあり、例えばモナリザのように常に観光客が群がっているような場合は、数歩離れた距離から双眼鏡で鑑賞するというのは
とても有用だという経験があり、CL Curioもその用途では使えると思います。
まとめとしましては、CL Pocket 8x25で書いた内容と同じになります。
小型ポケット双眼鏡に何を求めるのか明確化がご自身の中に有る無しで、投資に見合う満足の得られ方がかなり違ってしまうと思います。
個人的見解を言えば、高性能双眼鏡の醍醐味を味わうにはやはり最低限30mm以上の口径がお勧めで、性能的にもバランスが取れていると思います。
その中にあって、このCL Curio 7x21は道具というよりは名前のとおり「骨董」的な部分での所有欲を満たす意味で期待を裏切らない機種だと思います。
今回物撮りをしていて画像映えする美人さんだなと思いました。
ピンホール人工星像による焦点内外像
CL Curio 7x21 LED光源ピンホールによる焦点外像 WRGB
CL Curio 7x21 LED光源ピンホールによる焦点内像 WRGB
ダハ稜線の影が大きいのと、B色のピント位置がずれていますが、球面収差補正自体は良好で実視のシャープさの印象と変わりません。ポケット機でこの出来は凄いと思います。
|