肝心の光学性能的な見え味の話です。
中心のごく狭い範囲(みかけ視界直径5度未満と極端に狭い)は鋭像で優秀なポロ機中心像に肉薄と言えば大袈裟ですが結構良いところまで迫っています。
当初店頭で見た際には「明るく健康的な色彩でコントラストも良いけど解像感が全然無いな」という解像感の低さにある意味別の個性を感じた程でした。
原因として倍率色収差が視野の大部分に強く出ていることに加え軽微な像面湾曲とコマ収差や非点収差と合わせて中心以外の視野全体にざわつきを覚えやすいことがあります。
特に店舗などの蛍光灯下の室内や倍率色収差が目立ちやすいビルや白色の人工物ではその点が強調され中心像の良さに気付きませんでした。
一度その特性を理解した上で意識的に眺めることで上級機種で楽しめる物体の艶の再現性や良好な諧調のつながりのエッセンスも併せ持つ機種であることを知ります。
カラーバランスは一見良好で人によってはSwarovskiのような青が強いカラーバランスがフラット過ぎる印象を受けるかもしれません。
しかしSwarovskiと見較べていると自然の緑の景色の中にADは妙に緑に強い青味や時に不自然な紫の浮き上がりを感じる事がありました。倍率色収差の影響とは多分別の物です。
他機種と併用して観察をしていると光学系全体を通して透過率が低いのか40mm機に近い割には少し暗く見えます。
天体観望に使用した場合です。
星で見るとまずベガの色再現が他機種より妙に青白っぽく見えます。表面温度9300Kなので白から青白というのは妥当なのでしょうがそれでも他機種より青味が妙に強い気がします。
視野中心にその他1-2等星を導くとベールの無い純度の高い輝きを感じられます。星像の収束度合いはピンホール人工星で判明するのですが色毎のピント位置がかなり違うため各波長が混じった状態および実際の星像でビシッと鋭利な点に決まりません。また左右鏡筒で点像の収束に軽微な差がありました。
視野最周辺を除いて中心以外の中間画角(写真レンズの表現で書いてます)は中心から外れると倍率収差とコマ収差に非点収差と像面湾曲のオールスター戦状態なのですが意外にも崩れ方が急激で無いため時間の経過とともに気にならなくなりました。また中間画角を見る際にアイポイントを僅かにずらして見る(眼球だけを動かして見ない)と像が改善します。
見かけ視界の狭さは確かにありますが見かけ旧基準で50度以上であれば私は許容できました。歪曲は糸巻き収差が強くあります。
アイピース自体のブラックアウトは起こしにくく裸眼でのアイカップ調整も快適に行えます。光害地でのアイピース側からの迷光混入にも耐性があるほうでした。
フラットナーアイピース構成によるポロプリズム機やNikon WXで得られる全面鋭利な点像とは星像に関してはかけ離れています。しかし視野全体の良好なコントラストと周辺像で星座間を気軽に見流し目に止まった対象物を中央で注視する使い方にはとても合っていると思います。
最後に人工星による焦点内外像です。
内画像とも真円ではなく変形があり画像では片側のみ掲載していますが左右鏡筒で状態の差がありました。
画像のように球面収差は補正不足で内像のGでは綺麗な干渉輪が出ています。全体としてダハ稜線遮蔽の影響もあると思われます。
またRがかなり暗く透過が低いことが推測されます。 Allbinos.comによるPENTAX SDという別のエントリー機種レポートにおいて赤の波長における低透過率が分かっています。
PENTAXの5万円未満のクラスダハ機は上級機のZDとの違いとして波長別の透過率に何らかのコストダウンの影響がが現れていることが考えられます。
実売1万円台のダハプリズム 双眼鏡ということで何だか少々粗探し的になってしまいました。
しかし実際のフィールドにおいて機材のクセを把握しつつ使用すれば投資金額以上の満足度を得られる機種だと思います。
店頭の試用だけでは真価を発揮できない隠れた双眼鏡が世にはまだまだあることにも興味を覚えました。
後日、携帯フォトの画像を眺めて気がついたのですが、周辺像やちょっとでもデフォーカスになる部分に、例の青や紫の浮きが微かに見られましたので、実視での印象はこれにも由来すると思われます。
ED採用の最上級機種のZDにも俄然興味が湧いてきます。ZD 10x50は特に気になりますね。
今回は意図的に「、」を入れていません。はい。