小雨の降る金曜、JR両国駅から約束の時間までまだありましたので、国技館と江戸東京博物館を遠回りに歩き、そしてDocomoのビル風に一瞬傘を煽られやってきましたハクバ写真産業さんの本社ショールーム。
Tさんは早速新製品の箱二つを取り出してくれました。
この緑の箱を開くのがとても楽しみです。スワロフスキーとツァイスの最近の製品では内箱に風景や動物が描かれていますが、この製品がどんな性能か?だけでなく、この製品でどのような体験を得られるか?という顧客体験に焦点を変えているのではないかと思われる一例です。
Swarovski CL Curio 7x21 デザイナー マークニューソン氏
実はデザイナーさんの名前すら知りませんでした。私個人はデザイナー名やブランドでバイアスがかからない方の人間なので、気に入ったデザイン例えばフイルムカメラのCONTAX初代Tを、後から「ポルシェデザイン」と知って「あ、そうなん」と肯く程度の人間です。
ちょっと氏の他の仕事を検索しますと、ノリタケ PENTAX K-01 Appleでは iPhone 5c Apple Watch をデザインしたのではないか?と推測されています。確かに直線と曲線のボリューミーな打ち出しに共通のテイストを感じます。
本体とご対面です。。
いやー、小さい。
畳んであるとボリューミーに見えますがCL Pocket 25mmよりも一回り小さいです。
デザインを含め大きさは当たり前ですが 8x20 B ポケットに戻ったみたいです。また、20mm 25mmのポケットと決定的な違いは ヒンジ部に隙間が無いので指を挟みにくい事です。些細なようで意外にもじわじわと後から効いてくる点です。
構えてみます。
ヒンジが改善されたCL pocket 25mmの新型と同じく、硬めのセッテイングにしてあります。
ダブルヒンジは眼のポジションを調整する際に慣れが必要です。旧機種ではこのヒンジが軽い力で動いてしまうため
観察時に不用意にずれてしまいやすい弱点がありました。 CL Curioではそのような事もなく、とても安定して構えて観察できます。 デザインは旧8x20Bをモチーフに?さらに言うとブリッジのアルミ梨地仕上げ調から、過去に限定販売された8x20BのHERMESバージョンにも似ています。 burnt orangeの魅力はこのブリッジのシルバー色仕上げにあります。
素材がマグネシウムかアルミダイキャストかは現在情報がなく不明との事ですが、アルミの梨地仕上げに近い上品な仕上げで、例えダイキャストへの塗装だったとしてもそれとは気付きにくいでしょう。
往年のライカM2,3 バルナックの梨地クローム鍍金品質であればより・・・というのはクラシックカメラファンの永遠の夢でしょうか。
CL Curio で戸外を見てみましょう。
その間、T氏には私が持ち込んだ某機種とスワロフスキービノサスペンダーを試着いただきました。
ワイシャツにビノサスペンダー、合いますね。 仕事のできるスナイパー的な。
自分で装着すると見えませんので初めてみた光景です。
窓を開けて、小雨の降る日暮れ前の下町を流してみます。フォーカスを送ると細かい雨の粒が無数に宙を流れていく様がシャープに見えます。私の好きな旧SLC 7x42や現行のSLC 8x56 WBと似た、色彩豊か、かつ健康的な見え方と共通する描写です。濡れた路面に黒塗りのタクシーが通り過ぎます。歩道には缶チューハイ片手のおじさまが美しく見え(この景色、通天閣と歌舞伎町で既視感)見えるもの全てに艶感と透明感があり一種の温かみを感じました。観察中、軽い機体にありがちな手ブレもあまり気にならなかった事も発見です。7倍という低倍率によるメリットでしょうか。
ブラックアウトがほぼ起きず、前後左右多少見るポイントがずれてものぞくアイポイントに非常に寛容です。
中心の解像力も良好で容易にセンターのフォーカスが決められます。周辺にかけて穏やかに崩れていく感じは CL Bright 8x30にも似ています。周辺にかけてビルのエッジにパープル、ライムの色収差フリンジがありますが、SLCと同じ程度です。
夕方から日暮れに近づくにつれ少しずつ暗くなってきました。店先の植木や木々の茂みの暗がり、影になるビルの階段の踊り場はCL Curioでは黒く沈み、同じ場所を比較としてEL10x50SV WBではCurioで沈んだ部分を容易に明瞭に浮かび上がらせます。
当然ですが口径の差を見せつけられる場面です。ただし、Curioでも視野全体が暗いと感じるようなことはなく、同じ瞳径でもシーンによっては暗いと感じた旧CL 8x25とは少々違いがありそうな予感がしています。
EL50mmはマイクロコントラストを高めて緻密に積み上げたような鮮鋭な中心像、そして周辺までなるべくそれを崩れずに維持している特徴、グローブエフェクトと曇天・雨天下では寒色寄りを少し強く感じる傾向を今回再認識しました。一方、CL CurioはELの対極にある音楽ジャンルでいう「イージーリスニング」とでも言いましょうか。
一般に、7倍という倍率はバードウォッチャーさんからは選ばれにくいそうで、実際にCL Curioが使われるシーンがどこかを探られようとしていました。
ちなみに某所にてCL Curioの平行度や視軸の検査を行ったそうですが、ダブルヒンジにもかかわらず良好な結果だったそうです。
今回のCurioの企画はフイルムカメラ時代の末期に流行った高級コンパクトカメラや
今も脈々と続くRICOH GR やFUJIFILM X100シリーズに通じる「プレミアム+コンパクト」と相通じるものがあります。
私個人は低倍率双眼鏡が大好きで、かつ、こういったプレミアムコンパクト、もっと古くはデザインや物としての凝縮感が詰まった最高のコンパクトカメラRollei 35とその操作感にCurioは少し既視感がありました。
正直に言いますと、ハクバさんでデモ機を拝見する前に予約を入れていました。外見だけで一目惚れです。
実際に手にしましたら使い込んでみたいと思います。
ケースはキャンバス地のような、マグネット開閉式です。ベルト通しは無く、双眼鏡を折りたたんで収納可能ですがかなり余裕があります。その分ケース全体の厚みがあります。