勝間のオマージュとして販売時に紹介されていましたが、実機を手に取って堅牢な造りと手にも持った際のソリッド感、そしてEDレンズ使用による非常に現代的かつ色収差コントロールに優れた美しい像に惚れ惚れとしましたし、勝間の双眼鏡に過去特別な思い入れも印象に残る感想も個人的に無いので、これは堂々と賞月観星の逸品ですと胸を張って宣伝して欲しいと思います。
感覚的なインプレッションとなりますが、使用した感想など記します。
艶と視野内の見え方にいわゆる「とろみ」が少なく、日本の高級双眼鏡と欧州双眼鏡の中間的な見え方です。
視野周囲の色収差(物体エッジの色づき)が少なく高級双眼鏡のテイスト・空気感・素通し感を存分に楽しめ、倍率収差は中心から半径30%あたりから青・赤のずれが見られるが非常に少なくコントロールされています。
物体の瑞々しさ、艶感に御三家高級機に比べるとごく僅かに物足りないですが、現代的なマイクロコントラスト高めで、輝度の高い部分、例えば碍子に光る太陽や光線などに色づきや曖昧さのないキッチリと収束した描写をみせます。
白い陶器や素焼きの器肌のような階調表現の描出が問われるような物体を見た場合、十分な性能を見せ、その器の肌の微細な模様も解像力で表現します。価格的には10万円以上の機種にも対抗できると思います。
中心の先鋭さはNL Pureほどではないが十分です(6倍という倍率の問題もある)
良像範囲としては中心から半径40%ほど、実際には像面湾曲によるものが支配的で年齢が若い層には更に広範囲が良像と認識できると思います。ピントの位置を周辺に合わすと像の崩れが非常に少ないことがわかります。色の再現性、正確さに優れ視野内のコントラストの良さやクリアさ、美しさ、前後の空間のつながりの良さが特徴です。
工作精度の課題
CFのフォーカスを動かすと、ホイールの動作に合わせて軸のねじ切り切削精度や左右のアイピースユニットの摺動筒部とのクリアランスの関係で左右の光軸に対する直角の平行度が微妙にずれがあるようです。水準器を接眼レンズにあてて観察するとよりズレるポイントが明瞭にわかります。これが実視においては左右ピントの芯が微妙に合わないような感覚に捉われる理由かと思われます。この影響は目が鋭敏であるかどうかというより、加齢による像面湾曲への眼のピント調整対応能力の低下でより顕在化しやすいと思われます。
ちなみにNikon 8x32 やZeissのポロ機、Swarovskiのポロ機では全く水準器の泡は動きません。中高年の老化した眼には像面湾曲への対応能力、左右視差のずれへの感受性などについてより機械工作精度で担保された機種の方が優しいとも言えそうです。そういった意味では6x30のIF機により光軸精度維持の観点で期待する部分があります。
人工星焦点内外像
まとめ
双眼鏡にEDやAPOが必要か?そもそも10倍以下の低い倍率に色収差補正を行う意味が無い、双眼鏡は中心に観察対象物を置くので周辺像に言及する意味が無い、特に旧Zeiss双眼鏡好きな方からこういった意見を聞きますが、私個人は半分ご意見は伺いますがそうでは無いとも思います。
マーケティング手法としてのEDやAPOはネーミングに乗っかっている側面があるのは事実ですが、実際に前後フォーカスの空間と視野周辺の倍率色収差をコントロールされた製品がみせる像は旧来製品とは違う新しい視覚体験をもたらしていると言えます。それが双眼鏡の進化なのかは議論があるかとは思いますが、多様性の進化としては受け入れて戴きたいです。
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