ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

天文用途の双眼鏡では推奨評価 賞月観星プリンス UF 7x32 WP (Part 1)

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ずっしりがっしり、堅牢性を感じるつくり。

超まとめ

・センターフォーカス(CF)の低倍率ポロ機というニッチなジャンルに高性能・高級機のエッセンスを入れ込む事に成功

・従来ポロ機の大きな弱点であったプリズム周辺内面反射の改善に大きな進展 高い像面(視野内)コントラスト。ただし月などでクレセントグレアは出る。

・星見の用途においては高価格帯機と比較し、価格条件を割引いて考慮せずとも十二分な満足度(見やすさ、星の色・粒立ち、透明感、良像範囲、低色収差)

・パンチのある像コントラスト(低周波MTF高め?) 星見用途だけであれば、3cm 低倍率はこの機種を推奨

 

・昼間の自然観察や一般用途、子供へ常用させる場合、皮膚アレルギーが少々心配な方、高級機と本気で比較されたい方 → Part 2をご一読ください。

 

このポロプリズム機の元プラットホームは Levenhuk Sherman 社のPro 6.5x32

Allbinos.com 2016年のレビュー

https://www.allbinos.com/308-binoculars_review-Levenhuk_Sherman_Pro_6.5x32.html

と共通であることが推察される。 こちらも光学性能は比較的良い評価だが、フォーカスリングの硬さや作り全体の荒さが指摘されていた。

 

賞月観星では、この器を使ってアップグレードしたものも含め似たポロ機種を3つ販売してる

 

PRINCE UF 7x32 WP(フラットフィールド)

 

PRINCE UWA 7x35 (77度広視界アイピース) 

 

PRINCE ED 6.5x32(UFと同じ65度アイピース だが、1群1枚少ないスマイス非使用?)

 

正直、この3つの製品情報を見比べてもWebページ上で情報が散在していることもあり、いまいち何が決定的に違うのか分かりにくかった。

そこで一番高い「最高峰」とされているUFを選んだ次第。

 

分解による簡易計測では3群4枚に1群1枚のスマイス レンズを組みあわせた焦点距離約18.5mmのフラットフィールドアイピースと思われ、実際の星像では中心から半径方向で60-70%が点像として描出し、ごく周辺でやんわりぼやけていく。Pleasingで見られた非常に強い非点収差は、この機種では軽微なコマ収差と共に存在は少し残るが軽減されている。 視野周辺を見回した際のブラックアウトはしにくく、非常に覗きやすく安定している。

中心から星像はカッチリと比較的締まった像で、焦点内外にピントを振っても収まり方が美しい。カラーバランスと透明感も良好なので星の色彩が綺麗である。何より、視野内のコントラストが良く、これは丁寧なポロプリズム の艶消し塗装とプリズムカバー(対物片側のみ)と、レンズやプリズム へのコーティングの良さから来ている。

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美しいコーティング

 ポロプリズム故の弱点で、アイピース のアイポイント外に平行に瞳がずれると月光などの強い内面反射がある際、強いフレアが回り込んで見え易く、On-Axisでも角度により視野外からの迷光でクレセントグレアがやはり出てしまう。しかし星見では月しか問題にならないため実害は無い。

満月の観察では月面の周囲の視野背景に薄く散乱した光が回り込み、背景の黒さでは最良のダハ機には敵わない。ただ、従来ポロ機の中ではとても健闘している。

月面自体は高いコントラストにパンチのある像で、色収差のフリンジも少なく、一定の透明感も確保している。

本機の直線歪曲収差補正は正しく補正する方向であるようだが、私個人は星空で日中使用でも回転球現象(RB,GE)は実感していない。改めて日中でビル群を観察すると、EL Swarovisionのように、周辺で像の圧縮があり、結果的に日中に双眼鏡を左右にパン(振る)すると回転球現象は起こり得る。ただ、Swarovisionに比べれば軽い。

 

蟹座から獅子座の「閑散期」の星空をWX10x50と比較で流すと、光害地ではパッと見の印象において7x32と同じで、しかも星の色はPRINCEの方がわかりやすいという・・。星像の粒立ちや、小ささ・硬さはWXが中心から周辺まで「狂気のパフォーマンス」で圧倒し、見続けて見える星数は無論50mmが上回る。

しかし、32mm機 2万円後半 と考えると、常識ある市民は普通こっちなんだろうと思わず夜空の遠くを見つめてしまう。

 

操作性においては、前評判どおり、フォーカスホイールが「硬い」。両手の指で回すと言うより「力でひねる」感覚である。

中心軸・目幅調整も全て固め。 

これらは超高粘度のグリスを意図的に使用していること、接眼部がCF式である故の呪縛、加えて接眼部の防水確保にO-ringが使われている事が総合的に硬い理由である。

粘度の低いグリスでクィックにCFフォーカスを動かすと、フォーカス機構の機械精度のアソビが操作感にすぐ現れてしまい、CFの場合画像のように左右接眼部がフォカースの軸を上下する際にがたつき微妙な左右ピントズレや傾きを起こす事があるからと推察している。(この機種は極小)

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CF軸による接眼部移動

現にZeissのDialytシリーズのCF機や他社のCFポロ機でも、経年使用され左右接眼部のガタが出ているものはよく見かける。

特に像面が平坦でピントが浅いアイピース +老眼世代にはこのフォーカスリング前後送りで視野内のピントが波打つのが結構辛い。

 

 

 

ここまで簡単にレビューしたが、賞月観星さんからの注文確認Emailに以下の文章があり、自信の程がうかがえる機種である。

 

 

「賞月観星プリンスUFシリーズは良像範囲にこだわった賞月観星CF式双眼鏡の最高峰モデルです。見え味鋭く、より明るくて鮮明な視野を実現しました。本気で世界トップクラス御三家の見え味を再現することを目標に開発した自信作だと自負しております。単価20万以上の双眼鏡と見比べてくださいませんか。コストパフォーマンスだけではなく、見え味も確認してもらいたい一品です。」

 

 

流石に20万円以上の機種と比べるのはどうかと思ったが。

では、遠慮なく。

Swarovski NL Pureとの比較を含め、昼間の自然観察での用途には? 

その他留意するポイントは? 

ポロ機として乗り越えられない課題、外装ゴムや使用ケミカルの品質の課題、視差と立体視など・・・

Part 2にて紹介します。

Part2

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