賞月観星APO 6x30 CF
勝間のオマージュとして販売時に紹介されていましたが、実機を手に取って堅牢な造りと手にも持った際のソリッド感、そしてEDレンズ使用による非常に現代的かつ色収差コントロールに優れた美しい像に惚れ惚れとしましたし、勝間の双眼鏡に過去特別な思い入れも印象に残る感想も個人的に無いので、これは堂々と賞月観星の逸品ですと胸を張って宣伝して欲しいと思います。
感覚的なインプレッションとなりますが、使用した感想など記します。
艶と視野内の見え方にいわゆる「とろみ」が少なく、日本の高級双眼鏡と欧州双眼鏡の中間的な見え方です。
視野周囲の色収差(物体エッジの色づき)が少なく高級双眼鏡のテイスト・空気感・素通し感を存分に楽しめ、倍率収差は中心から半径30%あたりから青・赤のずれが見られるが非常に少なくコントロールされています。
物体の瑞々しさ、艶感に御三家高級機に比べるとごく僅かに物足りないですが、現代的なマイクロコントラスト高めで、輝度の高い部分、例えば碍子に光る太陽や光線などに色づきや曖昧さのないキッチリと収束した描写をみせます。
白い陶器や素焼きの器肌のような階調表現の描出が問われるような物体を見た場合、十分な性能を見せ、その器の肌の微細な模様も解像力で表現します。価格的には10万円以上の機種にも対抗できると思います。
中心の先鋭さはNL Pureほどではないが十分です(6倍という倍率の問題もある)
良像範囲としては中心から半径40%ほど、実際には像面湾曲によるものが支配的で年齢が若い層には更に広範囲が良像と認識できると思います。ピントの位置を周辺に合わすと像の崩れが非常に少ないことがわかります。色の再現性、正確さに優れ視野内のコントラストの良さやクリアさ、美しさ、前後の空間のつながりの良さが特徴です。
工作精度の課題
CFのフォーカスを動かすと、ホイールの動作に合わせて軸のねじ切り切削精度や左右のアイピースユニットの摺動筒部とのクリアランスの関係で左右の光軸に対する直角の平行度が微妙にずれがあるようです。水準器を接眼レンズにあてて観察するとよりズレるポイントが明瞭にわかります。これが実視においては左右ピントの芯が微妙に合わないような感覚に捉われる理由かと思われます。この影響は目が鋭敏であるかどうかというより、加齢による像面湾曲への眼のピント調整対応能力の低下でより顕在化しやすいと思われます。
ちなみにNikon 8x32 やZeissのポロ機、Swarovskiのポロ機では全く水準器の泡は動きません。中高年の老化した眼には像面湾曲への対応能力、左右視差のずれへの感受性などについてより機械工作精度で担保された機種の方が優しいとも言えそうです。そういった意味では6x30のIF機により光軸精度維持の観点で期待する部分があります。
人工星焦点内外像
まとめ
双眼鏡にEDやAPOが必要か?そもそも10倍以下の低い倍率に色収差補正を行う意味が無い、双眼鏡は中心に観察対象物を置くので周辺像に言及する意味が無い、特に旧Zeiss双眼鏡好きな方からこういった意見を聞きますが、私個人は半分ご意見は伺いますがそうでは無いとも思います。
マーケティング手法としてのEDやAPOはネーミングに乗っかっている側面があるのは事実ですが、実際に前後フォーカスの空間と視野周辺の倍率色収差をコントロールされた製品がみせる像は旧来製品とは違う新しい視覚体験をもたらしていると言えます。それが双眼鏡の進化なのかは議論があるかとは思いますが、多様性の進化としては受け入れて戴きたいです。
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双眼鏡 平行器(光軸検査器)のはなし
双眼鏡を写真用レンズのメンテナンス感覚で分解清掃し、元通りに組み直したと思ったら視軸が盛大にずれ、元に金輪際戻らなくなるというのはマニアにあるある話だと思います
その次のステップで平行器(検査器)に手を出すというのは当然の流れだと思います。
という訳で、このblogを読まれるような病膏肓に入るレベルの方には馴染みのある話題だということで強引に話を進めます。 (こんな感じで良いのでしょうか?)
双眼鏡は左右それぞれの光軸が両眼に対して平行にかつ、垂直平面に対しても左右回転ズレ像の倒れ無く調整されないと脳内で立体像合成がうまくなされませんし、脳で強引に立体像化が出来ても長時間の使用は健康を害する事につながります。これを双眼鏡の光軸平行度、他としてJISでは2段階のスペックで許容誤差が設定されています。視軸の簡易チェックは無限遠の鉄塔・アンテナなどを使って左右射出瞳(アイピース)から0.5-2m程離れて中心像から左右とも逸脱していないか、または上下左右の視野環限界に鉄塔・アンテナを持っていき左右が同じタイミングで視野外に消えるかを見る方法があります(後者はアイピース視野環の工作精度も関係するので鵜呑みにはできませんが)
古い双眼鏡や普段使用している双眼鏡に左右像の合致に違和感や使用している際の疲れを感じるようであれば、専用のツールでチェックを行うことも必要だと思います。修理マニアの方には必携のツールだと思います。 現行品であればメーカーに相談するべきで自己分解するなどは論外ですが。(という事にしておきます)
日本望遠鏡工業会では過去に目幅(IPD 60 64 70mm)3種類に合わせてそれぞれ携帯用光軸検査器として頒布していましたが、現在は在庫無し製造終了となっており再販が望まれます。
国内では自作の頒布をされている方がおられ、私もそれを購入させていただきました。
IPDは固定ですので、そもそも目幅調整を行った際に双眼鏡の左右ブリッジの工作精度が良くなく平行度が機械的に変わってしまう双眼鏡には、ご自身が使われる目幅と離れた検査機でチェックをしても意味が無い可能性がありますが。その話題に入り込むのは今回は止しておきます。
結論から先に言いますと、アルミフレーム筐体に光学メーカー製のスプリッターミラーを使用されて相応の簡易検査精度は出ていますが、私の購入した個体は単眼鏡で倍率を上げて、平行器単体でまず無限遠がどの程度ずれているかを確認したところ見事にずれていました。
これは正直JIS AA基準を検査を行うのに精度を満たせないレベルでした。
勉強として内部を拝見、調整したところ以下がありました。
・ずれはミラーの固定に起因している
・ミラーはソフト接着剤で固定
・ミラー台座は金属座とネジ止めで位置調整は可能
金属ネジの加工が粗末で緩めて微調整が難しい。ミラー固定接着剤がソフトエポキシ系を使用しているようで堅固に位置定めができていない
ネジ切りのやり直しと、固定ネジを別のサイズに変更、接着剤を硬めの物に変更
観察窓側から単眼鏡で倍率を上げて、無限遠の像を左右ピッタリ合わせてミラーの位置固定を行いました。 結論としては検査器の精度自体を使用前にまず疑う事だという点に気付かされたという事と、こういったツールを用いて自分の感覚に頼る部分を排除できる安心感が何よりの収穫だというのが感想です。
なお、取り上げました検査器は現在も販売されていますが、内部が改良されている可能性もございます。その点は販売元に確認を取っておりません。
また、分解行為は販売元の保証やサポートの対象外となる事にご注意ください。
ネット上では個人の方がこれら検査器光軸の内部調整が可能なタイプを開発されている記事をあげられています。是非販売に至って戴きたく応援しています!!!!
CANON 10x42 L IS 人工星焦点内外像
細かい論評はしませんが、UDレンズ使用のLとありますがアポクロマートと言うには青の焦点位置が遠くにあります。また内外の対称性と真円性もあまり良くありません。
個体差なのかもしれませんし、手ぶれ補正光学系の撮影にはもしかしたら当方の撮影方法に技術的に見落としている点があるのかもしれません。
気がつけばご長寿なキヤノン 10x42 L IS WP
バリアングル光学式手ブレ補正、ダブレットフィールドフラットナーレンズ UDレンズ採用 最短2.5m
発売年が正確に記載されている公式資料を見つけられていませんが、価格.comの発売時価格情報を見る限り2006年8月とあります。もう10年を軽く超え20年へと近い事を知りますと、もうキヤノンは本当に更新する気が無いのだなと、一種の諦めと製品が売れ続けているからであろう実績に対するキヤノンの自信への感嘆が交錯してしまいます。一方で発売時価格と2024年現在の実売価格が殆ど変わっておらず、欧米競合品の恐ろしいまでの価格高騰に比べればキヤノンの良心を感じずにいられません。
実は過去に本機種を購入していました。しかし残念ながら初期不良らしき症状があり返品しているため長期の使用経験がありません。その後も何度か購入に至りそうな波があり品川のショールームにおいて10x32ISとの比較を何度もしていますが、結局購入に至ったのはシフト式の10x32ISだったります。 今回フォロワー様からの貸与をいただき、レビューというよりは他機種との比較を散文的に記したいと思います。
まず、どうしても長年この機種を手放しで受け入れられない理由が光学式のバリアングルプリズム手ブレ補正(IS)にあります。
ISをONにすると周辺の色ずれ(倍率色収差と色毎の像面湾曲の差)が少し強くなる傾向があります。白い物体を周辺に置くと外側がパープル、内側中心方向にライム色のずれがみられますが、それがIS駆動で僅かに増えます。
また、三脚に固定し人工星等の観察を行うとISのOFF状態と比較し、究極的な解像力がONでは落ち、画面全体に本当に僅かな斜がかかった様に見えます。 戸外において背景の明るい部分がISのONで部分的に揺らいで見えたり、視野をパンした(振った)際に視野内の一部分が揺らぎ残り、遅れて像内の均質性が取れたりする現象があり、一度気がついてしまうと生理的に気分が良く無いという事があります。いずれも一般の方が言及されているのをあまり聞いたことがありませんので、重箱の隅を突くレベルの個人的な印象なのだと思います。 後発のシフト式10,12,14x32ISではこの現象が起きないため個人的にはバリアングルプリズム固有の事象だと思っています。
10x32 ISとの比較
持ちやすさは10x32ISに分がある。親指の位置がLISでは鏡胴の太さと絞られていないデザインの悪さでどうにも困る。
LISはフォーカスノブの位置が遠く使い勝手が良く無い。
10x42LISは焦点前後にパープル/ライムの色ずれが少し感じられるが、焦点では収束する。緑の葉や枯れ葉の質感豊かな再現と階調のつながりがスムースで非常に自然に、かつ、リアル感を見せる。 視野内のクリアさを保っているが僅かに少しコントラストの低いごく薄いベールを感じる。 対して10x32ISは、焦点前後の色収差がUDレンズ等を使用していないため激しくアクロマート画質であるが焦点面自体は収束している。時にコントラストがどぎつく感じる。視野周辺にかけての色ずれと焦点前後の色収差が激しく木々の描写がざわついている。 白い花の輪郭は美しく無い。解像力はあるが、物体の丸みの感じ方や階調再現が時に中級・初級機の見え方をする時がある。具体的にはハイライト部の飽和が早く時に平面的な見え方をする。
IS駆動時は両機ともチリチリとした制御感が限界的な解像部分の限界を観察すると感じるが、シフト式ISの方が微細な揺れを抑え込めてないように見受けられるが、視野内全体の均質性・安定性は高く盤石な動作安定感がある。
LISは視野をパンした際に、数秒視野安定時間を要する。LISのボケによる立体空間は非常に美しい。
後ろボケの周辺方向にIS動作で二線ボケが増える時がある。非点収差が増大する影響かもしれない。
LISによる暗部の描写は特に濃い葉などは少し黄褐色を感じる。反対にハイライト部分も黄緑を感じる。
10x32ISは黒や暗部のコントラストが強くパンチがある。
逆光時は両機ともクレセントグレアが発生するがLISの方がグレア発生がより強く出てしまう。
Nikon VR 14x40との比較
木立でメジロやシロハラを観察
LIS暗部の緑褐色かぶりを感じる。コントラストが高く視野内の像の艶を感じる。正確な色再現をしているのかは常に疑問。IS ON時のチリチリ動作感をやはり感じる。
VR14x40のIS動作はゆったりとした動きで手ぶれの微細な振動は制御しきれていない。前後のアイポイントによっては盛大にグレアが出やすい位置がある。LISに比べて色再現がニュートラルで、シロハラの愛らしい眼と羽の色彩が正しく見えている。
情緒がある見え方はLIS (LIS はウェット。VRはドライ)
LISは像面が大気の揺らぎの様に僅かに部分的に波打って収束する時がある。
Swarovski NL Pure 10x42との比較
LISで観察をしていると金色のコンソメスープの中から外界を観察している様に感じる。視野のコントラストの高さと艶感を感じこの点はNL Pureに劣っていない。 IS動作後の不自然さをどうしても気にしてしまい、画面内のどこかに揺らぎ残りや左右ピント合致の不安定・違和感を感じつつ収束する感覚が残る。 NL Pureはポロプリズム機的な中心のシャープさと時に分析的な見え方をし、LISを常に上回っている。正確でビビッドな色再現でもLISを圧倒している。 トラツグミとシロハラを途中からNL Pureでばかり観察していた。比較を忘れる。
いかがでしたでしょうか。UDレンズを使用した色収差補正とL・高級機として恥じない像の艶や立体感を実現しており、実用としての手ぶれ補正と光学性のバランスから本機種を星や自然観察における最高機種と評する方もおられ、それには肯首もいたします。しかし、バリアングルプリズムから起因すると思われる僅かな代償ともいうべき動作不安定さが、後続のシフトIS形式で払拭できている点、NL Pureなど光学性能的に別次元のViewを魅せる機種が台頭してきた現在、薄褐色に偏った視野に微妙に安定しないバリアングルISレガシーを引きずったままにせず、シフト式ISの真のL機種を早く出して欲しいと個人的には思います。 しかし、NL Pure やVictory SF、新型IS 32mmとの価格差を考慮すると1本手元に控えておきたい気もして悩ましいです。
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番外編 JAXA 筑波宇宙センターへ行ってきました
今回は双眼鏡類とは全く離れ、JAXA 筑波宇宙センターを訪問したお話です。
この場内自体は不定期・年末年始を除いて誰でも指定された範囲内で見学が可能な施設です。参加したガイド付き見学ツアーも諸条件を満たし料金を払えば「筑波宇宙センター紹介ビデオ」「きぼう運用管制室」「宇宙飛行士養成エリア」の3つを場内バスツアーとして見学できます。
「筑波宇宙センター紹介ビデオ」
場内の概要や宇宙開発への関わりを動画で知る事ができます。東京ドーム6個分の敷地に2千人近い職員や外部関係者が勤務しているとのことで、行きがけに筑波近辺のご出身または勤務されていた方からのお話として、つくば周辺の小中学校は親御さんがこういった科学研究に携わる方が多いため、お子さんへの教育的影響が強いと。特に夏休みの宿題など気合の入り方が「ガチ」だと(笑)。これは容易に想像つきます。結局親も口出しをしてハードルを上げてしまうアレです。
「きぼう運用管制室」
この建物内では撮影禁止のためカメラ、スマホ、スマートウォッチを含め撮影機能のあるデバイスは入口の管理トレーに全て預けてからの入室となります。
24時間シフト交代で地上よりISSのきぼうユニットの監視・指示・実行・サポートを行っています。他国と協調している関係で宇宙飛行士の通常勤務8時間(活動時間)に相当する時間帯が日本時間で夜中に相当するため、地上管制が忙しい時間は夜になるそうです。職員の方の机の傍に某エナジードリンクがあったのが端的に物語っていました。 モニターが多数配置された席を見つつもWindows OSの?PC的なモノはわずかに見られただけで、その他は汎用端末ではななさそうな機器ばかりに見えました。個人的にはいわゆる使用されている通信バスやプロトコールは?インターネットに接続しているのだろうか?SCADA的なもので配置されているのだろうか?等々興味をもちましたが、ガイドさんに聞くような事は控えました。(フライト制御にも使用されるミリタリー規格が使われていると後日ネット上に情報がありました)
「宇宙飛行士養成エリア」
無重量環境試験棟・宇宙飛行士養成棟にあります。
お出迎えは船外活動スーツいわゆる宇宙服です。スーツ内を水冷チューブで循環冷却し温度を快適に保つ工夫だそうです。スーツの前面にダイヤルがあり右手首に装着された小さな鏡にうつしながら操作でき、鏡にうつす事を前提に文字が反転されているとのこと。フェースカバーは強力な太陽光の赤外線・紫外線を防ぐ金色のカバーと通常のカバーとスライド分離して使用できるそうです。この金色のカバーは後で調べると本当にAuの様で550-2000nm以上の反射率が高い金の特性を利用しています。VernonscopeのGold star diagonalの事がふとよぎりました。天体望遠鏡マニアの性ですね。
その後、人工衛星や輸送船ユニットの外装保護に使用されているサーマルブランケットも金色ですがまさか同じく金が使用されているのかしら?とう話をしていたのですが・・している訳もなく、こちらは黄色いポリイミド樹脂にアルミ・銀の蒸着がされたものとのことでした。
今回、とある団体イベントの一環として組まれた見学ツアーでしたが、その後にJAXA職員・研究者の方によるISS「きぼう」ユニットに関する説明や課題、意見交換会などが組まれた非常に有意義な時間でした。その中で公知になっている情報やちょっとした差し支えない小話を最後にご紹介します。
「きぼう」にはさまざまな実験を行える機器・設備があり地上400kmの宇宙空間特有の環境を活用できます。
1) 10-6乗から10-4乗Gの微小重力 (地上は1G 無重力と安易に言わないところがサイエンティストの矜持を感じます)
2) 宇宙放射線環境
3) 10-5乗Paの高真空環境
「きぼう」を利用する実験系を組む上で地上の常識や普通が通用しない、また思い及ばなかった制約が多数存在することに驚いたというのが感想でした。
1番の制約はコスト。何をするのにもコストがつきまとうことです。
2023年10月現在の「きぼう」利用費用一部抜粋です(Webサイトより)
- ※2 軌道上リソースの使用料は以下のとおりです。
- 打上費:330万円/kg
- 回収費:550万円/kg
- 宇宙飛行士作業料:550万円/時間
- 軌道上保管料:25.6万円/年/リットル
- 保管時の冷凍・冷蔵機能付加料:393万円/4か月/リットル
- 通信料:6,200円/Mbps/時間
なかなか痺れる料金体系です。特に作業料金が550万円/1hrというのがまず効いてきます。
1日8時間/週休2日の基本勤務原則がある宇宙飛行士ですが、5分刻みのスケジュールが設定されているそうです。その彼らに実験のセッティングや作業、地上からの遠隔操作実験においてもサポートをお願いするため、トラブルによる時間の消費が直接金銭的ロスに直結します。そのため、実験手順や作業手順を明確にしておくことはもちろん、なるべく簡単に誰でもできる内容にする、できれば宇宙飛行士が作業をしなくて済む系を組む。これらが重要だそうです。
なぜなら作業を行う飛行士を実験系に応じて地上から人選することができない(当たり前ですが)、必ずしも作業を行う飛行士がその作業や実験のスペシャリストではないからだそうです。ですから実験系を自動化したユニットを飛行士にセットしてもらい、地上から遠隔操作で起動させるという系が理想のようです。
また、作業を簡易化・簡略化するための専用治具や工具を開発する場合もあったりもします。
次に打ち上げ費とそれに要るする準備や手間です。打ち上げを他国にお願いしている為、例えばサンプル調製が必要な生物系・細胞培養系の実験では打ち上げタイミングに合わせて場合によっては他国にまで出向いて調製が必要であること。水など液体物は重量物なのでできるだけ打ち上げたくない。また、実験後のサンプル成果物を持ち帰る必要がある場合その保存輸送方法や宇宙でどこまで処理しておくかなど。
また、実験系自体に地上の常識とは違う点、例えば対流がないため熱の伝導が違う、微小重力下で液体に気泡が発生したらけっこう致命的、開放系の実験系は組めない、使用する化学物質に打ち上げや接続するユニットの他国と確認交渉が必要である事などなど。
いろいろハードルは確かにありますが、人類が宇宙環境に進出適応する未来のため、地上では再現できないデータを取得し科学技術の発展に貢献する目的においてISSと「きぼう」はとても価値のある設備だと総じて思いました。
そうそう、「きぼう」には共焦点レーザーユニットが装着されたライカの顕微鏡があります。生物医学系でも強烈なライカ・ツァイスマニアが存在し、私もとある先生からライカ顕微鏡の良さを延々お話をうかがった事があります。ライカ、ニコン、ツァイス、オリンパス(名前変わっちゃいますが)の戦いは宇宙にも及んでいたのですね。