ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

NL Pure 8x32 と SF 8x32  短時間対決の勝者は?

某月某日。

 

偶然にもSwarovski NL Pure 8x32 と Zeiss SF 8x32を見比べる機会を得ました。

 

以前blogで、SF 8x32の試用の際、購入したい3cmの筆頭と書きましたが。

しかし早くも強敵の出現です。 試用時にNL Pure 32の予価について聞いていませんでしたが、2021年5月13日現在のアナウンス実売35万円強と聞くと、認識を新たに「オオゥ」としか言いようのない異次元感があります。 業界に敵なしと踏んだスワロフスキー の判断でしょうか。 

 

NL Pure 8x32

42より見かけ視界が狭く、実質SF32と広さに関して体感上の違いはないです。しかし、見え味はNL Pureそのもの。(妙な表現ですが、NL Pureは私の中で見え味の形容詞化をしつつあります)

中心像のピリピリ・ピシッとした、前後フォーカスから急激に立ち上がる感覚といい、深青から緑の透過率が高いことで植物の葉の色や、高度の高い青空から地上に近づく塵や水蒸気に白ずんでいく微妙な諧調を正確に描写する様、そしてビルやアンテナの先を見ても物体の立体感と金属質感が手にとるようにわかる再現性。 

 

一方で、42と同じく眼球回転だけで周囲を見回すと軽くはなっているけれど、ブラックアウトを生じるのと、やはりクレセントグレアは残念ながら出ていました。 またSF32に比べて、重量配分のせいか数字ほど軽く思えないのが意外でした。

 

銀座の名物T氏とSFととっかえひっかえ見比べたのですが、T氏はSFを覗いて少々首を捻っています。どうもNL Pure32と比べると以前感じたSFの素晴らしい中心像の切れ味に感覚的な弱さを感じられたようです。 

 

氏の恐ろしいところは、長年の野鳥観察と光学機器経験で鍛えた鋭眼をお持ちであることで、翻って私の嗜好といえば色や諧調再現、空間に拘りがあるものの、天体望遠鏡で星のジフラクションリングやエアリーディスク像を吟味するようなレベルは双眼鏡に求めていない「鈍感民」であり、私にとってその点は僅差の頂上決戦程度にしか感じませんでした。

 

NL Pure やELが実現しているフラットな透過率波形は、人間の視覚的には逆に青味を強く感じさせ、ともすると色温度の高いLED光のように見える時もあります。

 

SFについてはTintingまでいかない、Color hueの違い程度の僅かな視野の偏りで、クラシックな歪曲補正と周辺にかけてなだらかに像が崩れる特性と合わせて非常に安心できる像質です。 このあたりは好みの領域かもしれません。

 

最後にT氏が「あれを見て」と。

 

あるビルの蛍光灯に照らされた薄暗い一室が、NL Pureだと普通に見えるのに、SFだと室内蛍光灯の色がグリーンアンバーに強く色カブリをしているのです。

 

日中光下でビル内と対比できるため、余計に色被りが顕著にわかりました。 自宅に帰る途中でT氏にしてやられたかな?とクスリと笑ってしまいました。

というのも、何となく自分で発見したような気になって、実はT氏は以前から現象を知っていた上で気づかせたかったのかなと。思い起こせば過去にも何度かあったような(笑)有り難いことです。

 

この現象の今のところの理解は、3波長蛍光管での450nm付近の青が、SFの紫外域にかけてのカットオフと被って影響している?です。

とすると、実際のフィールドにおいては、影響はほぼ無関係ですね。

SWAROVSKI  EL SWAROVISION 10x50

f:id:JungleMusica:20210419232433p:plain

 

Swarovison 50mm機を試用した時はまさに衝撃だった。「鮮烈さ」という言葉を苦し紛れの表現で使い出したのもこの機種からである。 Color fidelity という単語の本質的意味と意図することに意識しはじめたのもこの機種からだと思う。

近年の双眼鏡におけるパラダイムシフトを起こしたのがSwarovisonであり、一部愛好家からアンチの声が上がったのにも一定の納得感はある。

 

 

本レビューでは画像とバードウォッチングの部分がマイナーチェンジ前のEL、天体使用は主にWBでのインプレッションである。

 

 

WBマイナーチェンジによる光学的な変更はコーティングの改良のみと言われている。

日中のビルの白い壁と日陰の暗部を同時に視野内に入れた際に、そのコントラストと白い壁の透明感の描写において、サイドバイサイドで取っ替え引っ替えして、何とかわかるレベルで違う。このレベルなら、汎用ストラップが使える旧SWAROVISIONでも良いかとその時点では思ったが、後日聞く話では回転球現象(RB GE)が出にくくなったとの噂もある。(私個人は違いがないと思っている)

 

 

まず、多摩川河口の殿町干潟にて子供と探鳥会に参加した記録から・・

大潮の干潮で、しぎ、ちどり、こあじさし、ゆりかもめ(冬・夏の顔が白と黒の2種)カワウ、カモ 各種潮の引き状態・時間の経過にあわせて多種の鳥が顔をだし、移動していく。 

手持ちと三脚使用の併用で観察した。 

 

10倍という倍率は鳥を見るのに拡大が足りない側面はあるが、ホバリングするコアジサシが急降下したり、急旋回する様を追うのに、より高い倍率機やフィールドスコープではつらいと思われる。

最初はフォーカスノブにグリスのトルク感が少なくカリカリ・スカスカ感が気に入らない点だったが、フォーカス追尾の点で実際に鳥を追うことにより、かなり使われる場面を想定して設計されていることを実感できた。ボケた像から比較的素早くフォーカスを合わせられる。しかも何がボケているのかが分かりやすく、ボケ像自体にも美しさがあるのが特徴。 

 

先鋭な解像力を中心から広範に維持している事で、視野のどこで捕らえても堪能できる。 特に、高輝度な背景をバックに白い鳥のエッジに色収差が少ないということがどれだけバーダーに見易さを与えるのかも実感できた。コントラストおよび輝度の高さで白い鳥のディテールが潰れるような事もなく、階調とのバランスも取れている。印象的な白い羽毛の輝きの背景には、水面の反射のきらめきがボケて見える。それも収差による色づきが少ないことで、とても自然で肉眼視の延長のように鑑賞できる。

 

三脚に据え付けて双眼で見ると素晴らしい解像力をさらに発揮できる。単眼でみるスコープよりも両眼視による脳内補完で倍率の低さをある程度補えている感じである。

それに、小学生には10倍双眼鏡を手持ちで鳥を追うのはやはり難しいようだ。 小学生とスワロELを知っているプロのガイド役バーダーさんがそれぞれEL50をのぞいては「すごっ!」と唸っている。

 

50mmが日中に必要かは議論があると思うが、視野内の明るさと解像力に寄与している点と、瞳径の大きさか、はたまた接眼レンズの設計の妙か、ブラックアウトがしにくく目の位置に寛容なのも良い点。太陽が高い位置にありある方向へ向けた際に、鏡筒内への反射で視野周辺にわずかなノイズゴーストが見られたが、それ以外で例えば真っ白くフレアがかったりゴーストがでる事は起きなかった。

 

 

回転球現象について GE(グローブエフェクト) RB(ローリングボール)

 

パンニングによるグローブエフェクト(回転球現象)は、海沿いなど広い場所では気にならない。 木立のような直線が乱立する森の中で鳥を探すシチュエーションにおいては、パンすることで「かなり気持ち悪く」回ってしまった。見かけ視界がシリーズ中一番広い(旧基準64度)ことで、最周辺の像の圧縮が強く、余計にグローブエフェクトを感じやすい。 

 

10X50のグローブエフェクト(ローリングボール)現象を、樽型の歪曲補正のせいだと主張する方がおられるがそれは間違いで、直線歪曲補正はほぼ真っ直ぐである。しかし、直線歪曲補正による弊害が周辺にかけての立体物や円形物の倍率差と歪みに現れる。 月などの像が明らかに中心と周辺で変わるのが良い例である。

直線歪曲収差を補正していることによる回転球現象はSWAROVISIONの特徴のひとつで、10X50は8.5x42よりも更に強い印象である。見かけ視界が2度ほどスペック上広いことと、正確に測定はしていないが、見かけ視界の55-58度を超える周辺部で急激に角倍率の低下と物体の変形がおきるため、回転球をより強く感じる。 ちなみに接眼レンズの第一面に息を吹きかけると、通常のレンズと違い画像の赤い円内外でムラを検知できる。しかもこの円部分をマスクすると、丁度実施でGEをエンハンスする領域と重なる。 賞月氏のサイトで以前、Swarovisionの断面画像を拝見したが、ちょうど接眼レンズの第一面が複合非球面のようにも見え、接合レンズ部の曲率が大きく変わる部分が赤い円にも符合する。

f:id:JungleMusica:20210423193134j:plain

 

耐久性が必要な第一面に複合非球面を使うであろうかという疑問は残るが、現在のところこれが理由ではないのかと思っている。 広視界双眼鏡ではGEを防ぐ目的で、低コストの双眼鏡はのぞいて、糸巻きの歪曲収差を設計上残すのがセオリーであった。しかし、携帯フォトなどの需要にミートさせるためにSWAROVSKIはこのような設計に至ったと推測している。その理由に、円形物を視野外に置いた場合、目視では変形と角倍率低下をおこしているのに、IPhoneで撮影すると全く中心像と同じ変形の無い像で撮影できる事を確認している。

 

f:id:JungleMusica:20210423193229j:plain

 

(注意)グローブエフェクト(GE)は脳の視覚システムによる錯覚の一種であるとの解釈が一般的であり、個人差に影響する部分もあるため、このレビューをはじめとする個人の経験が万人には必ずしも当てはまらない事に留意ください。

 

天体観望での使用

天文用途では市街地での使用から肉眼で5等星程度まで見える地方で使用したが、どのコンディションでも素晴らしい像を提供する。

中心から最周辺のエッジ部を除くエリアまで良像範囲は広く、非点収差も気にならない。僅かな像面湾曲は周辺にあるが気になるレベルではない。Swarovision全機種に言えることだが倍率収差は残っていて、月を周辺に置くとそれなりにわかる。

 

月、特に満月近くで月面を美しく見せる光学系は、望遠鏡でもその優劣?かどうかは別として差が出る観察対象だと個人的には考えている。それは一様に光源がフラットにあたり、光の強度が高いことでディティールを限界的に表わす能力を求められるからである。10x50で見る満月は倍率の低さを除いて印象的である。

海の部分の滑りや、ティコやコペルニクスからの光条が広がっている様をキチンと描写できている。ゴーストや内面反射も最小で、背景の黒さも際立つ。時々雲が流れて月に流れ込み、雲の複雑な陰影を照らして消える様を見ると、川端康成が山の音で描写した雲の炎を思い浮かばせる。

5等星が肉眼で確認できる条件での星景では、M8 M20から銀河中心部、冬の天の川、一切の固定観念を忘れて楽しめる。ヒアデス内の星の色の違い、ぎょしゃ座内のいままでの双眼鏡では気づきにくかった星雲・銀河の認識、小さい発見がある。この瀬戸内海沿いの宿では、部屋に戻ってからも窓を開け放し、畳に寝転び、腕力の持続す限り冬の空を見続けた記憶がある。

一方で市街地の観望でも美しい星像は結ぶが、淡い対象が光害で全て消え去ってしまうため、3-4cmの良質な機種との差が縮まり、より星座の並びを視野広く見たい見方に無意識に変わってしまう。その場合、10倍という倍率が問題になってくる。手持ちで10倍はやはり手ブレとの戦いである。対象を注視する、し続けたいと思わせる状態においては我慢ができる。

ELに7x50や8x50が欲しくなる瞬間である。

 

美術鑑賞での使用

美術品といっては失礼なのかもしれないが、この双眼鏡で一番衝撃を受けた観察対象は、奈良 興福寺の八部衆像である。

八部衆立像では勿論、阿修羅が断然有名であるが、個人的に好きなのは迦楼羅、乾闥婆、そして胸部から上のみしか残っていないが何とも愛嬌のある表情の五部浄像。

いずれも金の彩色が残る部分の絢爛さ美しさ、乾漆の解れの繊維、これらがEL50を通して恐ろしいまでの質感をもって迫ってくる。しかも触ったらこんな手触りであろうというザラついた感触が脳内でフラッシュバックする感覚があり、一瞬の恐怖を覚える。

その後、美術館使用にも積極的に使用したが、鑑賞距離によっては最短2.8mが支障を来すケースもあったが、薄暗いことの多い展覧会では口径による集光力が役に立った。

 

まとめ   

今後NL Pureの50mmやZeiss SFの50mmが出るまでは、50mmの「原器」である可能性が高い。 筆舌に尽くし難い。

 

f:id:JungleMusica:20210419232500p:plain

 

 

 

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

スワロフスキー EL10x50SV WB スワロビジョンWB双眼鏡[02P05Nov16]
価格:348520円(税込、送料無料) (2021/4/19時点)


 

 

HOME

サイトロン SIGHTRON SV 842 ED ファーストインプレッション

f:id:JungleMusica:20210413124706j:plain

SV 842 ED と NL Pure 42mm

Made in Japan サイトロン 渾身の新製品 SV 

告白すると、現在所有の双眼鏡中で持って触って楽しい、見て楽しい双眼鏡の筆頭。

 

そもそも何を持って「良い」双眼鏡なのか、究極的には個人の価値観の違いによる。

また、双眼鏡は「アイエイド」製品という側面もあるので、「あなたのメガネと私の眼鏡、どっちが見える?」というのと同程度の愚問なのかもしれない。

読者の方は先刻ご承知でこのレビューを読んでくださっているとは思うが。

 ----------------------------------------------------

サイズ 横・厚・縦 145x55x181 mm とAKプリズム採用により長く、横幅もある。

重量 968g と重い。

最短1.8m メーカー公表、実測1.5-1.6m

見かけ視界 旧基準64°  、実視界8°

 

実際に手に取ると、大柄なサイズにより重量が分散されとても軽く感じる。持ちやすいバランスで疲労をそれほど感じない。アイカップの引き出しが少し浅く、もう数mm欲しいがアイピース自体は眼球位置にそれほどシビアでもなく、ブラックアウトも昼夜ともに起きにくい。

 

EL SwarovisioやNL Pureにくらべ、青の波長透過率がごく僅かに低く全体に微かな黄暖色。

しかし、視野全体がとても明るく、十分な透明感、明瞭で濃い色彩とコントラストの出し方をしていてとても楽しめる。 僅かな像面湾曲と軽度な倍率収差があるが、良像範囲は周辺まで経化が少なく広範である。 中心像の鮮烈さはNL Pure やELに伍す事はできないが、それでも尚素晴らしいレベル。 特筆すべきは内面反射対策の徹底により、クレセントグレアやフレアが非常に少なく抑えられている事。この点だけで言えばELやNL Pureをも超えている。

 

星見の用途でも、日中の自然観察でも、42mm機を検討される際には是非候補に入れていただきたい。 いわゆる欧州高級ブランド御三家のハイエンド機を光学性能を含めた全てで超えることはコストの関係で実現できていないが(技術力による差とはもはや思っていない)、これらブランドの中級機には確実に優っていると思う。

 

 

f:id:JungleMusica:20210413130032j:plain

左 SV842ED, 右 SLC7x42最後期コート,下 NL Pure

 

SWAROVSKI SLC 7x42

ELもSWAROVISIONも経て、やはりこの旧SLCにまた帰ってきてしまう至極の品。

 

超まとめ

・年代、リファブリッシュのタイミングでコーティング等の違いが顕著

 それによるカラーバランス、透過率の違いが大きい

・プリズムの曇った中古個体にかなりの確率であたる

・950gとずっしり重く、200g以上の外装アーマーが原因

・Zeiss Dialyt 7x42, Leica Trinovd 7x42と並び、古き良き時代の名機の一つとしてコレクション推奨 (1000ドル以上支払って、これら旧機種を今購入する価値があるか?判断はお任せ)

・突出した性能は無いが、星・自然観察に常に安定した見え味

 

f:id:JungleMusica:20210411121858j:plain

 

私がSWAROVSKI 双眼鏡を知ったのは、2000年以前、未だ都内に中古望遠鏡ショップが複数存在していた時代。 曇り有りの5000円ジャンクポロ機 7x50 SL Marine を入手したこと。

分解したら、光学系がことごとくシリコーン樹脂に埋没された激しい構造で、結局元に戻せなくなったほろ苦い思い出。

 

その後スカイウォッチャー誌(星ナビの前誌)にて、SLCの特集があり「星がカラフルに瞬いて見える」という記述に想像力の限界を試され(その当時はニコンをはじめとしたポロ機の解像力至上思考であった)、実際に閉店前の店頭で1-2等星を覗かせてもらっても「何か星像が太いな」程度で良さが理解できなかった。 ただ、街灯下の街角を流した時、行き交う人々が暗がりから浮かび上がる情景にはとても驚いた記憶がある。

f:id:JungleMusica:20210411132435j:plain

 

SLCの系譜と主に外観の違いは以下。

1985-
8x30 7x30をはじめとし,外装にブラックと黄土調のコンビネーションラバー+ツノ付きアイカップで防水型 Mark 1(MK1) その後ややこしいのだが、Mark 2として ブラック+グレー、ブラック+ブラックの 3色展開になった。次のMk2とは違う。

1991-
グリーンまたはブラックの単色ラバー外装に統一され形状が変更された Mark 2(MK2) アイカップはフラットトップまたはツノ付きに取り替え可能。

1995-
MK2の外装ラバー意匠にわずかなデザイン変更(おもて面のラバー段差のカーブが鋭角になった) Mark 3(MK3)

2004-
外装をグリーン+ブラックのコンビネーションに一新した SLC New (SLC Neu)

2010- HD レンズを搭載した SLC HD

2013- マイナーチェンジを施した SLC HD WB

 

2021   AKプリズムのSLC HD 56を残し42mmを廃盤

光学設計的に大きく変更されたのは、やはりHDガラスを採用した2010年モデル以降であろう。今回の話題は1990年後半から2000年前半のコーティングやミラー反射を細かくアップグレードしていった時期のSLCについてである。

 

f:id:JungleMusica:20210411132834j:plain

スワロマニアの方ならご存知のとおり、シリアル番号の最初のアルファベットには
L EL
D SLC
G CL Pocket
K CL Companion
N SLC HD
などの機種シリーズの意味があり、続く最初の2桁数字にに30を足すと西暦表記の製造年となる。

このルールは1991 年から2020年9月製造間で、Kで始まるここ数年のSwarovision ELやCL Brightも確認している。

 

そして、2020年秋以降の最新ナンバリングは10桁となり、Bird Forumによると

例  KD10xxxxxA

頭の2桁が製品ライン、製品種  続く2桁数字に2010を足すと西暦、5桁の製造番号に最後が製造国(工場) と推測されている。


--------------------------------------------------
スワロフスキーほど、光学的改良や仕様変更を公式・非公式に頻繁に行う双眼鏡メーカーはないと思う。
SLCシリーズに関してはSwarobright(スワロブライト)とという、1999年中頃に発表された、シュミットペシャンプリズムのコート改良+ミラー増反射技術にて、見え方が大きく変わった。
2002年製造品よりBOXおよび保証書に明記がされるようになったとの情報があり、所有する当該機も表記がされている。以前所有していたD71にはなかった。
だからといってこれから中古機を探す場合、この表記だけを目安に探すのが絶対の正解ともいえない。

 


古いSLCシリーズを7x30 8x30 7x42 7x50を機種によっては複数台購入してきた経験があるが新品、中古含めこのシリーズの一番の弱点は「プリズム・内部の曇り」が高頻度高確度で起きやすいことである。 海外オークションではMintとあっても大抵見逃されやすく、では新品ならどうかとLEDライトを持参して販売店でチェックすると長期在庫品は結構な確率でプリズム周辺に曇りがあったりする。

これと関連する事象と後々で気がつくのだが、SLC New(Neu)となる最後のグリーンアーマー色のSLCモデル以前の中古には、外装ラバーに強い芳香剤のような臭気がするものが多い。
はじめ、海外の前ユーザーの保管が芳香剤と一緒にしていたか? 程度に考えていたが、複数同じ事象にあたるとその考えが間違っていることに気がつく。
また、ラバーの劣化やロット差かと思ったこともあったが、臭うラバーを拭くと表面から臭いは取れるが、本体中心から再びなぜか臭ってくる。

今現時点での推察は、ピントリング内のフォーカス伝達機構に使用されているグリースのロット差で非常に揮発性と臭気がある物が使われていた。それが一定期間をおいて蒸発しラバーに再付着した。その蒸発物が鏡筒内部に及ぶことが光学系の曇りにつながっている。という仮説だ。

 

-------------------------------------------------------

2011年にDr. Gijs van Ginkel 氏がBinocular History Societyでレクチャーした光学ワークショップの資料がpdfとしてネット上に公開されている。その中でSLC 8x30の2ndモデルからNeuに至る、各透過率測定データが興味深い。

 

https://www.houseofoutdoor.com/documenten/pdf/HISTORY-AND-QUALITY-DEVELOPMENT-OF-SWAROVSKI-OPTIK-1935-TO-THE%20PRESENT-TIME.pdf


MK2 SwaroBright(SB)なし
MK3 SBあり
New(Neu) SB+改善したコーティング
この順に透過率が徐々に改善し、特に450-550nmにかけて10-14%近くNewに至る過程で高くなっている。
これは、各モデルでのカラーバランスがかなり違っていることも示している。
経験的にもMK2やMK3のSBなしモデルあたりは暖色系に偏っており、夕景はレッドエンハンサーを薄くかけた様なドラマチックさを演出する。SBありやNewに至ると視野全体の明るさを感じつつ、現在のSwarovisionに通じる青っぽさ、寒色系にだいぶ傾いてくる。(実際にはSwarovisionほどフラットではなく黄緑が残る) 
このあたりは好みの見え方に対応するモデルを、実際にのぞいて確かめるしか方法はない。

ここからが、中古品を選ぶ際に難しいところ。
外箱のSB表記や、本体外観や製造番号からSB有無やコーティング世代を推察することは可能であるが、前述したSLCのクモリやすい性質から、修理にだされているケースがあり、その際にはプリズムを含む鏡胴ユニットを丸ごとその時点の在庫部品か、再生産部品に交換される事実がある。

このころのSLCは画像の様にヒンジを含む中心軸は金属ダイキャス製で、左右の光学ユニットは樹脂製で覆われジョイントは接着式なのである。 本国工場に修理に送ると、かなりの確率でプリズムクモリはすでに組み立て済みのユニットに付け替えられる。
使われた部品がSBありなしかどうか、修理された時期で判断するか、または実視で判断するしかない。近年の修理経験では、もしかしたらプリズムコーティングを再設計した、NEU当時よりも透過が改善?しているのでないかと思われる。

光学性能として最新になれば良いではないかと思う考えもあるが、2ndや3rdのSBなしで感動した油彩画の様な夕景は、SBありやNEUで見ると「普通」になってしまう。 必ずしも透過率改善が良いことか考えさせられる。

 

SLC 7x42 Bの見え方についてまとめると

色味や透過率が製造年代と、メンテナンスを受けた個体でバラバラである。と言える。
共通するのは、視野周辺まで非常に安定した像質であること。特に星空を流した時に、星々の粒立ちや輝きが他種双眼鏡には見られない特徴的な描写をする。明るい輝星が、散っていると言うと誤解があるが、鋭利な点像で無く*マークのように見える。粗悪な双眼鏡にある結像が甘いというわけではなく、中心はあくまで硬く結んでいるのに散って自己主張している様にみえる。 

 

f:id:JungleMusica:20210411135339j:plain

7x42の本体。中心軸は金属ダイキャストで、プリズム胴部は樹脂のハイブリッド

HOME

賞月観星プリンス UF 7x32 WP (Part 2)

 

この双眼鏡を自然観察、日中の用途に使う場合や、プリンスUFを購入する際に留意する点に触れる。

 

1) 自然観察での見え方、グレアやフレア耐性について

2) 立体視と近距離の見え方

3) 歪曲収差補正と回転球現象(GE,RB)

4) 格上の双眼鏡との比較

5) 外装ゴムと本体からのケミカル臭い

 

1) 自然観察でのグレアやフレア耐性について

 

画像のような森林公園で太陽が上から差し込む環境が、いつも私がグレアやフレアをテストする状況である。

f:id:JungleMusica:20210405210843j:plain

レンズやプリズム内での反射迷光自体は、直接光源が入ってもそれほど酷いフレアは出ず、一定下にコントロールされている。却ってアイピースの瞳光束以外に回り込んだノイズに、何らかの拍子で目のアイポイントがズレた際にノイズが見えやすく、これはポロプリズム の一つの欠点であった事を久しぶりに思い出す。

プリズムの内面反射は、丁寧な黒色塗装とプリズムに遮光を目的とした溝を切るなどの努力で抑えられている。しかし、対物レンズ後ろと、プリズム抑え枠などいくつかの部分が強い光でかなり光って、最大は画面の半分を覆うクレセントグレアがでてしまう。

f:id:JungleMusica:20210405213128j:plain

f:id:JungleMusica:20210405213148j:plain

f:id:JungleMusica:20210405213207j:plain

対物レンズ後もかなり光る。

このクレセントグレアのでる状況はSwarovski NL Pureより少々多く、良質なダハプリズム機に後塵を拝す。 が、他のポロ機よりは断然良い。

 

こういった極端な光線状態以外では、視野内の良好なコントラストと透明感を維持しており、濃い目のカラフルな色彩を楽しむ事ができる。

 

 

2) 立体視と近距離の見え方

3m付近から10mあたりの中近距離では、視差による強い浮き上がりで、立体感が強調される。また、ピントの深度が深く、フォーカスリングのピント追い込みと、眼が合わせに行く動作が混ぜこぜになり、立体像が上手に脳内で腑に落ちない事がある。

長い事ポロ機を触ってないからかもしれないが、強力な立体感覚と引き換えに、長時間の観察では疲れが早く来る。(本機の視軸の平行は無論、ちゃんと合っている)

 

 

3) 歪曲収差補正と回転球現象(GE,RB)

 Part 1でもすでに述べたように、直線歪曲補正がなされている上に、際周辺で像の圧縮があるため、人によっては樽型歪曲があるように知覚されるかもしれない。

ビル群など直線物が多い場所では、水平にパンした際には回転球現象が起きやすい。

 

また、このアイピースの特徴として、瞳の光束アイポイントに対して目を上下左右に動かすと、視野周辺の光量落ちや視野周辺の色調変化が激しい。これは瞳の球面収差の周辺光束の処理に特徴があるからである。 欠点とは一概に言えず、最近の広視界型の新機種ではこの傾向が増えている気がする。

 

 

4) 格上の双眼鏡との比較

f:id:JungleMusica:20210405220011p:plain

左 NL Pure 10x42 右 Prince UF7x32

iPhone SE2による撮影なので、極小センサー故の諧調幅再現ができずに、実視での違いが十分表現できていないが。

実視の比較において、Prince UFは一見パンチのある色彩と濃さで、色収差も抑えられ解像力も十分でているように見える。しかし、NL Pure では花びらの微妙なトーンとグラデーション、陰影明暗をきちんと描出できており、本当の立体感や物の柔らかさ、硬さを高い次元で表現できている。 

対して、Prince UFはMTFでいう低周波のコントラストを最大化して、見た目のパンチはでているが詳細に見るとトーンジャンプして、極端な表現をすると「綺麗な花々を高彩度でプリントした」写真が前後の空間中に綺麗に並べられているように感じる時がある。

Prince UFの描写は昔のMF Ai Nikkor レンズのような線の太いダイナミックな描写+立体パノラマ感だろうか。

 

好き好きあるとは思うが、これが違いである。

 

5) 外装ゴムと本体からのケミカル臭い

ゴム見口、外装、CF軸などのグリスが新品開封時から私にはかなり強烈に臭う。

特にゴム見口はお湯やアルコールで抽出洗浄を繰り返したが、肌に刺すようなわずかな刺激を常に感じ、気体への拡散がある。ゴム系には様々なケミカルが使用されており、一部のブランドではプラスチライザーをはじめとする添加剤を使わない方向に向いている。ただ、この業界全体に於いてはアレルギーテスト済みなどの情報を出しているメーカーは皆無だ。

私個人はエポキシ樹脂系にだけアレルギーがあり、皮膚に触るゴム系には少し注意している。この問題は日系某メーカーでも「ゴムラバーのブルーミング+異臭」で過去に経験した事があり、その時はゴム納入ベンダーのロットの問題と認め交換対応された。

もし、お子さんやアレルギーがある方が使用する場合は、購入前に何らかの情報を得るなり確認することも一考だと思う。

 

 

さて、

 

この価格で、ポロプリズム特有のダイナミックな描写を持ちつつ、ダハプリズム の高級機の味付けに近づけようとした努力は成功しているように見える。

UFのアイピースの特徴から、 UWAなど他の3cm機とのバリエーションがあるのにも正当な理由がありそうで興味深い。 一層の品質に対する向上も願いつつ、賞月観星製品には今後も目が離せない。 (日系メーカーにも期待!)

 

 

HOME