ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

Jungle's Classic One , FMT-SX 7x50, 5x15D CF, Trinovid BA 7x42

双眼鏡の覚書を書き始めたのは、カメラレンズを何度も忘れて同じレンズを繰り返して買っていたのを防ぐ意味で書き出したレンズ描写の備忘録の延長でした。ウェブサイトを開設して公開していたデータ一ログを先日PCから発見しました。2005年頃の、今読み返すとちょっと痛い、恥ずかしい内容ですが再掲します。 事実誤認もありますがご容赦ください。

意外にも書いている目線は今と変わっていない、進歩してないといいますか。

そうそうアクリル塗料のジェットブラックは手持ちが無いのでそろそろ買わないと。

それではお付き合いください。

 

Fujinon FMT-SX 7 x 50 new

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星を見るのに基本の7x50を探して行き着いた。
新型デザインでは、前作までの「業務用双眼鏡」然とした無骨さは無く、グリーンのゴムラバーと、プリズムハウジングを含めた部分が丸みを持たせた事により、優しさと高級感が増している。 ライカトリノビッドの様な「光学兵器っぽさと、隙の無い垢抜けたセンスの良さ」を両立させている。
 日本の双眼鏡に見えない・・というのは言い過ぎか。重さは1.3kgと重量級だが、手持ちでは軽量に感じ、操作性取り回しはすこぶる良い。

ヌケが良く非常に高いコントラストで色の偏りもない優等生。強い個性が無いのが特徴。見掛け視界50度は広くは無いが、視野周辺まで比較的均一性が高いので気持ち悪くは無い。しかし、フラットナーが入っているとは言え、Nagler Panopticアイピースの様な全面ピンポイントにはならない。中心から70%過ぎあたりから崩れる。その崩れ方は他の双眼鏡から比べると非常に穏やかというレベル。

瞳径7mmは昼間の使用には「昼行灯」で、口径25-30mm機と解像力にそれ程違いを感じない。試しにレンズキャップを3cm直径に切り抜いて装着すると、昼間においては視界の明るさが若干落ちる程度。余談だが、夜間の瞳径7mmはそもそも成人ではそこまで瞳が開かないので(一般的に5mm)意味がないという説があり、販売店やuserの中でも信じて双眼鏡選択の際に注意している方が結構いる。自分の瞳径を赤LED光下で簡易的に計った事があるが、30歳代筆者でも6.5mmはちゃんとあった。

また、瞳径にも関係して星を見るのに一時期10倍機が「背景のコントラストが上がるのでお勧め」と天文誌で言われていたが確かに背景が暗くなるので光害地では星雲状のモノは見やすくなる傾向はある。しかし、恒星に関しては10倍機で見えているものは同じ口径なら7倍でもちゃんと見えている。
しかも双眼鏡手持ちの10倍という倍率は結構シンドイ。手ぶれも凄い。 個人的には星景を流して見る双眼鏡は5-7倍が最適と思う。
もし、こいつが見掛け視界70度で、全面ピンポイントだったら他に何にも要らない・・・。

追記: 先日 FMT-SX 10x50の新型機を見る機会があった。見掛け視界65度で、周辺像の安定度は7倍機より上。広い視界の開放感もあり、かなり良く出来た製品と思います。10倍という倍率に抵抗が無く、昼間の使用頻度が高いならばお勧めです。

 

 

Nikon 5 x 15D CF

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High Class と称される高級コンパクトダハ製品。
フェーズコート、銀蒸着プリズム、チタン外装、最短1.2m。

ニコン双眼鏡とは個人的には相性が悪い。7 x50SPは1ヶ月も家に居なかった。 8x40DCFはその当時は良く出来た製品だったがエスパシオが出た時点で何の取り柄も無くなった。 10x42SECF辺りから像質に多少共感が持てるようになったが、やっぱり今でもニコンの画は好きではない。

しかし、この5x15D CFは違った! 西欧高級機の見え方に、ニコンらしさの隠し味がほど良いスパイスとなっている。こればかりは店頭で見てもらうしかない。 ミクロンの像質を余裕でぶっちぎっているのは序の口。スワロ、ライカ、ツァイスの20mm機と肩を並べる・・というか凌いでいる。ヌケの良さ透明感、キレ、立体感、どれも「本気で作る小型機怖さ」を存分に堪能できる。

見掛け視界の狭さは、周辺までの像の均質性で何とかカバーされている。光学系の唯一の欠点は、対物内側の遮光ブロックにある。施条切りされているが黒塗りが不足ぎみで、斜光線に対して光るので視野コントラストを著しく下げるのだ。(写真右の矢印部分)

幸いにも? 防水仕様ではないので対物を外して、施条部分と遮光環をいつものお得意様「アクリルガッシュ ジェットブラック」*1で再塗装した。 この効果は劇的で、野外使用でコントラスト低下する場面が殆ど無くなった。

博物館、美術館、近所の散歩から鳥見まで幅広く使える逸品。

*1 ターナー色彩株式会社 の水性アクリル塗料 (油性の既存品に比べ、艶消効果が高い。塗りムラが無く水性なので扱いやすく食いつきが良く乾くと堅固。)

 

 

Leica Trinovid 7 x42 BA

最初に手に入れた高級機。

レモン社でZeiss 7 x 42 Classicと比較し最後まで悩んで決めた。
視界の広さや、圧倒的な高コントラストさはZeissの方が上だった(目が痛くなるくらい)僅かに黄色の暖色系に偏った色調が落ち着いた見え味。物体の立体感に優れ、薄明かりの「浮き立つ描写」は感動モノ。

星見用としては、コントラストが高いので特に彗星観察ではテールの細かい模様が良く判った。星像は中心は良いが、周辺50%過ぎから回る。このTrinovidシリーズはBNも含めて湾曲が結構有り、星などの平面にはちと弱い。

作り的には非常に堅牢で、SWAROVSKIやZeissの「遊び的要素」は無い。鏡胴を両手で閉じた時に、重いビンがぶつかるような、ごーんという響きが堪らない。
小型ながら890gと重めなので、体感重量がある。 最近出たUltravid 7x42を覗く機会があったが、これは別物だった。BA-BNシリーズの路線から、ZeissのVictory系統へ変えたというか。ある意味その無味無臭な透明感は驚異的だが、なんかつまらない。像面湾曲の多さはBA-BNシリーズと変わっていない。内面処理などの合理的な簡素化や、全体の質感が大幅に下がっているので、私としてはこのBA-BNをお勧めしたい。

 

 

いかがでしたでしょうか。自分で読み返しても、懐かしく、この3機種をまた買いたくなってきました。備忘録の抑止力はほぼ皆無ですね。

次はスワロフスキー旧機種です。