ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

コーワ、スワロフスキー 双眼鏡・フィールドスコープ体験会

先日ある催しに行ってきました。

場所は千葉県民心の聖地のひとつとも言われる鋸山です。

千葉県に長く住んでいた私にとって鋸山、鋸山ロープウェー、そして日本寺の大仏に千五百羅漢像は小学校遠足の遠い思い出の地でもあります。スワロフスキーとコーワのハイエンド・ミドル機が鋸山の頂上で文字通り頂上決戦をするという夢のような企画でした。(実際にはロープウェー山頂駅の展望台エリアなので頂上ではありません)

 

ひとえにこの企画を担当された写真家の千手正教さんの手腕と、協力されたハクバ写真産業さん、興和オプトロニクスさんの懐の深さで実現できたものと思われます。

観望会のひとこま



東京方面からのアクセスは車で東京湾アクアラインを通るルート、湾岸・京葉から館山道を通るルート、横浜以南からは久里浜から東京湾フェリーで金谷などがあります。今回PCで仕事対応をする必要があったためJR総武・内房線に揺られJR浜金谷駅から舘山ロープウェー乗り場まで少々歩きました。学生の頃に内房から外房線にかけて各駅停車途中下車で南房総一周の旅を何度かしているので懐かしさがこみ上げてきます。車窓の風景にあまり変化が無いのもちょっとした驚きです。

 

ロープウェー乗り場

 

金谷港を見下ろす絶景とスイス製ゴンドラ

 

ロープウェーは比較的短い距離でありながら高低差を旧石切場の断崖に向かって一気に駆け上るのでスリルと臨場感が凄いです。既視感があるなと思い出すのは小豆島の寒霞渓ロープウェイで高低差やサイズ感も似ています。

見下ろす港と東京湾が素晴らしく久しぶりに心躍る風景でした。

 

当日のコンディションは晴天ではありましたが湿度があり蒸し暑く、午後にかけて対岸の久里浜側が水蒸気で見えにくなる状況でした。また、野鳥はショウドウツバメやトビが時折現れ双眼鏡で一斉に追いかけていましたが、それよりも航空機マニアな方が数名おられたのでオスプレイや謎の米軍航空機も追っていました。

 

ハイエンドからエントリー機まで多数の機種が展示され無料で見比べることができました。個人的に注目の機種一部をご紹介します。 一般の方の体験お手伝いもしましたが、このイベント目的で来られた方というよりは海外の方も含め観光やトレッキングで登られてきた方々が大多数でした。小さいお子さんから女性、年配の方まで慣れない手つきで覗かれる先に現れる美しい景色に素直に感嘆の声を出してくださるのが何やら嬉しい瞬間でした。

 

KOWA YFII-30 ポロプリズム

2022年の小海で短時間お借りし好印象だったYF8x30の後継機種です

視野内の色付きが少なくポロプリズムらしい明るい視野と像です。中心像の明瞭さも十分合格点で見たい対象を常に真ん中に据え、視差による浮き上がり立体感を手軽に楽しめます。価格もお手頃で初心者に絶対のお勧めですというメーカーさんの言葉に激しく頷いていました。

KOWA YFII-30 ポロプリズム



KOWA TSN-66S

2023年9月新発売の機種 今回見たスコープの中で個人的に一番欲しいと思った機種です。

66mm フローライト対物レンズにマグネシウム鏡胴で軽量コンパクトに収まっています。TE-80XW (35倍広視野アイピース)との組み合わせで色づきの少ない非常に明瞭で明るい見え味です。ズームアイピースではまた違った感想になるかもしれませんが、昼光下の木々の緑から金谷港の街の風景、遠く海を越えて対岸の久里浜まで非常に透明感のある見え方で見た目に近い正確な色再現とハイライトまで濁りなく再現しています。 倍率色収差や驚くことに直線歪曲補正も良好で中心から際周辺まで良像範囲が広がっています。

あまりに気に入ったので三脚から離し手持ちで方々観察していましたら皆さんから「手持ちで見てるし・・(変態)」という優しい目で見守れてていました。

同じく手持ち使用を考慮したSWAROVSKI STC 17-40ですが、こちらもズームではない単焦点アイピースに交換できたなら同じ水準に達していたかもしれません。

KOWA TSN-66S



KOWA TSN-99

圧倒的な収差補正で中心解像力の鋭さ、クリアな見え味に圧倒されました。

 

SWAROVSKI BTX 115  

双眼スコープの雄です。値上がり前に買っておけばと言うのは後の祭りでした。個人的に踏み込めなかった理由の一つとして45度傾斜が天文用途には少し不自由がある点と、単眼と違いスプリッターの存在により僅かな視野のブライトネスとコントラストの低下が見られるのが今でも少し気になる点です。

とは言え、日中の往復する東京湾フェリーと港の風景は素晴らしい見え味でした。

SWAROVSKI BTX 115  



SWAROVSKI NL Pure 32mm 42mm

いろいろと双眼鏡を見比べ、NL Pureに持ち替えるとやはりこれは別次元だなとため息がでます。 最近某所にて、NL Pureは見続けると見え過ぎて少し疲れると言う声も聞いて確かにそういう見方もあるなと少し思います。

(NL Pure が上市する以前はELが同じことを言われていたことも思い出しましたが) 

KOWAさんがNL Pure に比肩するラインが現在無いことを素直に口にされていたのが印象的でした。きっと近い将来動きがあることを期待しています。

 

SWARIOVSKI STC17-40 56mm ズームスコープ

手持ちできるコンパクトさと作りの良さが魅力です。 ズームアイピースの見かけ視界をもう少し頑張って欲しかった気がします。 カラーバランスの良さや中止から周辺までズーム全域で安定した見え味です。

 

 

KOWA 双眼観光望遠鏡

これは山頂展望台に設置されている機種です。

Prominar 20x80  100円コインの投入でリチウムボタン電池によるシャッター開閉動作があり100秒間観察が可能になる観光地に必ず設置されているアレです。接眼部が独自なフジツボ形状でフォーカス機構が省略されていますがフォーカスの深度が深いので数十メートルの中近景以外は問題なくピントが合います。 全体的に視野の黄色アンバーの偏りが強くTSN-66Sの透明感ある眺めを見たあとだと別世界に見えます。中心像はコントラストもありがっしりとした像ですが倍率収差や色収差も見えいわゆるアクロマート画質です。 観光望遠鏡のビジネスモデルや屋内用に電子決済機能がついた機種があること、はては自動導入機能の可能性(これは冗談での話です)などという興味深いお話を聞けました。 これらの望遠鏡が販売の形をとっているものと思っていましたが、基本はレンタル設置ということで場所の選定と地権者との交渉や各種契約と申請など伺っていて興味深かったです。

あとは、これらの双眼鏡は誰が掃除をしているのか?という長年の謎も(笑)

KOWA 双眼観光望遠鏡




 

KOWA Genesis 33mm 

コーワのジェネシスは個人的に33mmや22mmを短期間所有していた事がありますが、レビューできる程所有していない為残念ながら記事にする機会がありませんでした。 33mmは44mmと同じ路線の落ち着いた像で、33mmで以前自然散策に使用した時に感じた「見える世界がハイライトの輝度を意図的に落とした日本画の味わい。整ったボケが美しい」というのを今回も同じ感想を持ちました。いつかきちんとしたレビューを行いたい機種です。

 

塩ミルクアイス 地獄アイス 

竹炭を使った真っ黒な地獄アイスが名物だそうですが、人気No.2の塩ミルクアイスが適度な塩味とミルクリッチなバランスで美味しかったです。

塩アイス




 

意外にもトレッキングポールを持って麓から登ってこられる方を多く見かけました、自分も次回はアプローチシューズを新調して麓から山頂を目指すのも楽しいかもしれません。(帰りはロープウェイ・・・)

ほぼ1日会場にてお手伝いと持ち込んだZeiss SFL 8x40との見比べなどもしていましたが、メーカーや販売代理店さん、そして舘山ロープウェー社員の方、そして千手さんらと楽しく情報交換できたのが1番の収穫でした。

JBFのようにメーカー機種が一堂に並ぶ機会はあれども、このように同じ会場で肩を並べてお互いの機種を取っ替え引っ替え試用でき、お話を聞ける機会というのはあまりないと思われます。 今後、他メーカーさんもご参加いただき多くの方に双眼鏡やスコープに触れる機会が持てれば良いですねというのは同席された皆さん一致した意見でした。

 

当日ご一緒いただいた皆さまに感謝申し上げます。

 

本企画に当方は関与していません。

当日は一般参加者様の観望お手伝いを行った謝礼とし、てロープウェー往復乗車券および頂上食堂にて琵琶カレーをご馳走になりました。その他の利益提供は受けておりません。

この見晴らしの良さよ