ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

星と自然のフェスタ 2021 雑感 ー 小海リエックス会場

今回は2年ぶりに開催された、長野県小海町の星と自然のフェスタ参加記です。

既にTLやblog等で参加者さんよりレポートが多数あがっています。そのとおりの盛況ぶりでしたし、何かと行動が制限されてきた日々から解放され、参加されている皆さんの心からの笑顔がとても印象に残った二日間でした。

ここでは双眼鏡を主にブースやイベントに参加した際に見つけた物・こと・出会った人について少々書いてみます。

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FUJINON/FUJIFILM 

画像を撮り忘れ、いや、HYPER-CLARITY HC8x42の左隅に見えるスケルトンTSX-1440。こちらが凄かったです。覗こうとしましたら、

「一応見えますが迷光が入るので・・・目的はプリズムユニットの動作を見ていただくためです」との説明。

内部が見えるとは言え上部天面からはメインボードが大きく塞がってそちらからは中が良くわかりません。それでも別の角度からは左右が連結された巨大なシュミット・ペシャンプリズムが迅速な追従性で鏡筒内を縦横無尽に動いています。また、目幅調整のための左右プリズムも観察でき、羊羹の両端を斜めに切り落とした菱形に側面2箇所ずつの迷光防止と接着のための溝がありました。はじめて見るプリズム形状にしばし見入っていました。

量産通常品も展示されていまして、所有している個体と安定して同じ品質で見えていました。ご説明を聞いていて納得したのは、やはりフジノンのプリズムIS技術は船舶用途から派生・発展してきた経緯があるとのことでした。 大きなブレ(低周波)への対応力が得意なのは自明の理ですね。

次にHC 8x42に手を伸ばします。 

30mm機は計画ないんですかぁ?と、かるーい気持ちで伺いましたら、まずは42mm機が軌道に乗りましたらというようなニュアンスでした。 

屋外の自然光下で初めて試用しましたが、これが結構綺麗なんです。

透過率とカラーランスが比較的良好なので黄・緑の誇張やTintingが少なく、山並の未だ残っている緑や青空の描写においてどちらかというと世代の新しいSwarovski SLCに通じる瑞々しさが感じられます。 一方で中心像の解像力・切れ味的にはちょっとマイルドでテロテロの一歩手前(この表現、昔からレンズ描写で内輪で使用してきたワードなのですが、由来不明です)、周辺にかけ倍率色収差はありますが像の崩れは穏やかです。出展試用品にはフィルター枠にステップリングとアルマイトフードが装着され、とても似合っていました。迷光防止と対物レンズに触れない効果、そして見た目の格好良さの両得です。 お値段と性能、そしてデザインの良さ、金属部品の手触り、このあたりを総合して欲しいなと思わせる双眼鏡でした。

 

サイトロン /シュミット  

いつの時間帯も大変な混雑で、SV842EDだけ触りました。

構えた際に両手前後にむっちりと重量が分散するバランスの良さ、ラバー左右の滑り止めとエルゴノミクスの秀逸さ、安定した見え味。

ざっくり20万円以上の機種にあるような見え味に突き抜けるものは少ないのですが、良い機種だと思います。試用品はS/N番号が近いので同じロットかもしれませんが、品質も安定していそうです。

 

KOWA 

久しぶりにGenesis 33mmと44mmに触れました。 ラバー外装とメカ部分の質はSVよりやはりより丁寧で上質です。

一見して誰にでもわかりやすい解像感とクラリティの高さが素晴らしい。以前感じた視野の薄黄鶯色の色づきが少し緩和されている?

もう少し他機種と長期で見比べてみたい衝動を感じました。

 

日の出光学

今回初めてヒノデ製品に触れました。6x30B+を見ましたが、意外や意外、真面目に作られていて賞月さんの好敵手と思いました。

ラバーの臭いなども感じず、中華製と言えど雑さは気にならず、ちょっと私の考え方を改めなければとも思いました。

 

PENTAX RICOH 

ZのEDおよび非ED 43mm以下が特売されていました。10x50EDの実機があれば見たかったのですが、こちらのブーズも大盛況で実機の有無についてお声がけできませんでした。

 

SVBONY

ぼすけさんと、智志さんにご挨拶。ぼすけさんは始終接客にお忙しそうで、ブースも盛況でした。夜に見たSV503 102ED 10cm F7の月は、黄・緑のわずかなフリンジはあれど、中心の輝く白い抜ける像が印象的でした。

 

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北軽製塩ビ4cmスコープと復刻吉田先生の本

北軽井沢観測所

20cm F10  反射にラベンデュラ63mmアイピースが付いていました。ご説明を受けて驚いたのが副鏡が短径10数ミリしかないとのことでした。日中の瞳径が開いていないにせよ視界に陰りやケラれは全く感じず当然中央遮蔽も微塵も感じないという不思議な経験でした。

そして入手したのが4cm 4倍 倒立塩ビ管スコープ です。 独自設計のプロースルアイピースに、丁寧な内面塗り、プリズムが無い構造も相まって素晴らしい透明感と明るさ。既視感があるなと思い出したのがSkipper 6x42または、後で見ていただいたハクバのT氏が言っておられた「スワロのライフルスコープ」それに近い描写です。 瞳径は18mmもあり、常識的には無駄の骨頂なのですが実視においてはアイポイント前後左右どこでも見える+視野周辺まで際までピンポイントという。もう何がなんだか理解できません。

その後、4倍という説明でしたが遠用で2.5倍程度であることがわかりました。

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北軽井沢観測所ブース



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Swarovski BTX 115mmで見る月は反則!

SWAROVSKI OPTIK (ハクバ写真産業)

CL CurioとElegant, SLC56b, NL pure 42,32  そしてBTX ATXの115mmがありました。

ELが展示に無いなんて・・特に50mmと思わず言ってしまいました。

CL Curio 7x21は自然光下でやはり素晴らしい見え味でした。1倍低いだけのマジックと言うより、アイピース設計がそれ以前のCL pocketから変わっているとしか思えません。1点見つけてしまったのは、太陽光の位置でクレセントグレアが強く画面下に出ることです。本国のプロモーションビデオで確認していますが、プリズムユニットの製造・調整場面で側面コバが塗られていないように見受けます。実機もそのあたりの影響がありそうです。

 

ブース付近では今回リアルでお会いできた皆さんと「スワロ談義」「望遠鏡談義からVixen FL-102とタカハシ アポとどれが素晴らしいか」「Zeiss Jena 望遠鏡の話」までだいぶ話が飛んでいました。

 

Sモトさんが今回入手したSwarovision前の初代EL 42mmで最後期の製品(Swarobright + Easyclean)を見せていただきました。

これが突き抜ける透明感と豊かな色で、透明感だけはNL Pureを凌いでいました。自分が所有していたものは発売直後(2000年前後)でしたので、だいぶ印象が違います。 あまりにSモトさんが羨ましくて歯軋りしていました。

 

その後、アイピースや各種天文機材に留まらず広範なご趣味のサイト「毒を食わば」を運営するKさん、そして我らが天リフ編集長 山口さんとも初めてお会いでき、3人で記念撮影していただきました。 ハクバのTさん、有り難うございました!

Kさん曰く、NL Pure 42はWXを除いて(これは用途も中身も別格なので)最高の双眼鏡である。と断言されていたのが印象的でした。

また「何を見ても美しい」というお話から太陽光に輝く碍子が美しいとのことでしたので、「もしかしたら電柱や碍子に反射する焦点内外像もお好きですか?」と私がお聞きしましたら間髪入れずに「いいねー。電柱最高!」とのお答え。

実は私もその喜びに半分脚を突っ込んできていますので、笑うに笑えずとも、最高に楽しいひとときでした。

KさんはこちらでもWXオーナー様として出演されてましたね。

 

初日の早朝は野鳥画家の谷口高司先生、野鳥写真家の菅原貴徳先生による探鳥会に参加しました。

谷口先生の奥様も参加されその気さくなお人柄に惹かれ、途中からずっと話してました。谷口先生は根っからのKOWA派、そして菅原先生は最近導入されたNL Pure 32をお使いでした。 野鳥初心者の私は鳥の声は聞こえど場所はわからず、鳴き声で種類も特定できずとおいう状態です。二大先生に導かれるまま次々と手持ちのSLC56で鳥たちを捉えることができました。特に朝日で黄金に輝くメジロの群れが飛び立つ様が素晴らしかったです。

探鳥会後に菅原先生とお話ししたところ、なんとNL Pureは8倍をお持ちでした。 プロのバーダーは10倍以上と思い込んでいましたので驚きです。伺ったところ、8倍でもNLは視野周辺まで解像し僅かな動物の動きが視野内のどこでもキャッチできるため、発見後にスコープに繋ぐ意味でも役に立つとのことでした。

そうそう、この時に同行されていたある方がTS-X1440を首から下げ、しきりと参加者にお声がけされていました。

もしやと思いお名前を伺ったところ、なんとこのフェスタに多大な尽力をなされている「おやじねこ」こと、Sさんでした。

工作品を購入させていただいた事もあり、blogも拝読してましたのでいろいろお話しできました。ニュージーランド遠征のちょっとピリッとしたお話にも驚きました。

 

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野鳥観察と星降る夜にも大活躍の大口径 SLC 8x56 HD そして6x6 ローライコード

 

最後、日中朝方の会場を急いでいますと時計台のあたりで何やら風景撮影をされている方が。

独自の構え方で誰が見てもあれはRollleiflex。 しかも2.8に違いないと。

多分Zeiss PlanarかXenotar の2.8に違いないと思いお声がけしましたら。ビンゴ。

Rolleiflex 2.8C のPlanar付きという通(EやFじゃなく)を使いこなすお若い方でした。

もうここまでくるとナンパです。

かなりの銀塩カメラ・フィルム通のお方で、Acrosの話やKodak Portraや再販したE100フィルムがレジに行くとき手が震えるくらい高い話、最後にモノクロフィルムの現像したのは何時? 私が持っているRolleicordのシャッターブレ弱点の話、クラシックカメラや最近の若い方のフィルムブームの話・・・。

ここまでカメラネタで分かり合える人に星フェス小海の会場で出会えるとは、と二人でちょっと感動していました。 これもリアル開催でのフェスならでの醍醐味ですね。

あ。お名前と連絡先聞きそびれました。

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まとまりなく書いてしまいました。

 

今回の小海では、抜群の透明度による素晴らしい星空(特に13日未明)を WX10x50 と SLC8x56で振り回せた事が僥倖でした。

そして、それにもまして同好の皆さんと心ゆくまでお話しできた余韻が数日経過した今でも残っています。 長野特産手作りおいしい「おやき」もまだ冷蔵庫に残ってます。

 

2021.11.26 追記 

K雲さん Webページ名を正しいものに修正、リンクしなおしました

銀塩カメラ のエピソード追記しました