ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

NL Pure 8x32 と SF 8x32  短時間対決の勝者は?

某月某日。

 

偶然にもSwarovski NL Pure 8x32 と Zeiss SF 8x32を見比べる機会を得ました。

 

以前blogで、SF 8x32の試用の際、購入したい3cmの筆頭と書きましたが。

しかし早くも強敵の出現です。 試用時にNL Pure 32の予価について聞いていませんでしたが、2021年5月13日現在のアナウンス実売35万円強と聞くと、認識を新たに「オオゥ」としか言いようのない異次元感があります。 業界に敵なしと踏んだスワロフスキー の判断でしょうか。 

 

NL Pure 8x32

42より見かけ視界が狭く、実質SF32と広さに関して体感上の違いはないです。しかし、見え味はNL Pureそのもの。(妙な表現ですが、NL Pureは私の中で見え味の形容詞化をしつつあります)

中心像のピリピリ・ピシッとした、前後フォーカスから急激に立ち上がる感覚といい、深青から緑の透過率が高いことで植物の葉の色や、高度の高い青空から地上に近づく塵や水蒸気に白ずんでいく微妙な諧調を正確に描写する様、そしてビルやアンテナの先を見ても物体の立体感と金属質感が手にとるようにわかる再現性。 

 

一方で、42と同じく眼球回転だけで周囲を見回すと軽くはなっているけれど、ブラックアウトを生じるのと、やはりクレセントグレアは残念ながら出ていました。 またSF32に比べて、重量配分のせいか数字ほど軽く思えないのが意外でした。

 

銀座の名物T氏とSFととっかえひっかえ見比べたのですが、T氏はSFを覗いて少々首を捻っています。どうもNL Pure32と比べると以前感じたSFの素晴らしい中心像の切れ味に感覚的な弱さを感じられたようです。 

 

氏の恐ろしいところは、長年の野鳥観察と光学機器経験で鍛えた鋭眼をお持ちであることで、翻って私の嗜好といえば色や諧調再現、空間に拘りがあるものの、天体望遠鏡で星のジフラクションリングやエアリーディスク像を吟味するようなレベルは双眼鏡に求めていない「鈍感民」であり、私にとってその点は僅差の頂上決戦程度にしか感じませんでした。

 

NL Pure やELが実現しているフラットな透過率波形は、人間の視覚的には逆に青味を強く感じさせ、ともすると色温度の高いLED光のように見える時もあります。

 

SFについてはTintingまでいかない、Color hueの違い程度の僅かな視野の偏りで、クラシックな歪曲補正と周辺にかけてなだらかに像が崩れる特性と合わせて非常に安心できる像質です。 このあたりは好みの領域かもしれません。

 

最後にT氏が「あれを見て」と。

 

あるビルの蛍光灯に照らされた薄暗い一室が、NL Pureだと普通に見えるのに、SFだと室内蛍光灯の色がグリーンアンバーに強く色カブリをしているのです。

 

日中光下でビル内と対比できるため、余計に色被りが顕著にわかりました。 自宅に帰る途中でT氏にしてやられたかな?とクスリと笑ってしまいました。

というのも、何となく自分で発見したような気になって、実はT氏は以前から現象を知っていた上で気づかせたかったのかなと。思い起こせば過去にも何度かあったような(笑)有り難いことです。

 

この現象の今のところの理解は、3波長蛍光管での450nm付近の青が、SFの紫外域にかけてのカットオフと被って影響している?です。

とすると、実際のフィールドにおいては、影響はほぼ無関係ですね。