ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

Zeiss Conquest HD 8x32

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旧CL Companion , Genesisの3cm機と比べて一番、視野が明るく、中心からマイクロコントラストを強調した像のエッジにキレがあり、像に鮮やかさを持つ機種。色味は僅かにグリーンアンバーだが、ニュートラルに近い。近距離の画質低下が少なく、どの距離でも像に一定レベルの艶とクリアさがある。歪曲はクラシックな軽度の糸巻き収差あり。周辺像の非点収差がPleasing並みに大きく、星像は周辺で全く点にならない。
縦の色収差については前後フォーカスでパープル・アンバーの色収差を検知できるレベルだが、フォーカスが合っているところは基本消し込めている。

倍率収差は中庸に残る。見かけ視界が64度と広い反面、視野の周辺8-9割から急激に崩れ、特に最外周は瞳の球面収差の影響が強く減光しカラーバランスも青に偏っている。(アイポイントを周辺を見る際に僅かにずらすと改善)

とは言え、価格を考えると素晴らしい出来であるといえる。

ゴムラバーとそのデザインに高級感が欠けるが、ラバーの触感が湿度をもったような吸い付く感じで個人的には良好。

フィールドで継続使用して感じるのは、当初わずかと感じた視野のグリーン傾向・寒色系着色による視野全体で彩度のわずかな低さを感じる。忠実な色味という言い方もあるが、色鮮やかな美しさという楽しみに若干欠ける。

内部構造としては、金属部品を多用しておりコストをかけているように見受ける。この機種を模したであろう中華製品コピーがいくつかあるが、コストダウンに樹脂部品で代用している。内筒のアルミ製金属部品には施条を施してあるがそういった内面反射対策にもかかわらず、おそらくフォーカスレンズのコバ塗り(対物レンズもされていない)がしていない部分と、その前後が光ることによるクレセントグレアが出やすい。

ドイツ製となっているが、新品購入時点ですでに内部のゴミや光学面の拭きむらなどが見られ、昨今の中華製の方が品質管理が上ではないかと思う部分も。光軸調整もこの個体は日本製品のような正確な追い込みがされていなかった。明確な根拠はないが、もしかしたら、組み立てのみ(または最終検査のみ?)ドイツ製なのかと疑う。

防水のためのO-リングや内部壁にグリスが少量塗布されている。個人的には賛同できない方法。

色味や彩度、周辺像の崩れなどが許容できれば、ブラックアウトのしにくさや、気持ちの良い広視界アイピース、近距離フォーカス可能、軽量で持ちやすく感触の良いボディなど、無難におすすめできる機種ではある。

 

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比較的手頃な価格で「ドイツ製」ツァイス を楽しめる

KOWA  Genesis も、カラーバランスの偏りが強い癖以外はコンクエストに肩を並べ、機械的仕上げやQCはコンクエストより上であることを追記します。