ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

Canon 10x32 IS (Powered IS Model) バリアングルプリズム を脱した意欲作

2017年突如発表されたPowerd IS搭載の32mm機種。

その時点で12x36 IS IIIなどのIS制御アップデート機種の発表が続いていたので、個人的には発売後10年を越えた10x42LISのモデルチェンジを期待していたが見事に外された。
まずはサマリーを。

pros
・改善されたカラーバランス
・静止観望に食いつきの良さを発揮するPowered ISモード
・IS時の光学的画質劣化が改善
・視野周辺まで良像範囲が広くフラットフィールドである
・迷光処理をはじめ光学的基本性能の向上による画像品質向上 
・バッテリー持続時間の向上

cons
・3cm機にしては大きく重い(シフト式採用と7枚もの対物レンズ系による)
・UDレンズ非採用。アクロマートレベルの残存色収差で、パープル・イエローフリンジが顕著
・高額な販売金額設定
・使いにくい、のぞきにくいアイカップゴムデザイン。

 ツノ付きカップなどのアクセサリー類オプションが無い。
手ブレ補正性能自体の改善は僅か? 

 訂正・過去機種にあった補正能力の周期ムラが無いだけ大きな改善

 

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裸眼で使用する場合、私にはアイカップの左右それぞれ鼻よりの部分のみ高さがありすぎて困る。折り返しゴムがただついているだけなので、接眼レンズと目の位置高さが調整できない。

接眼レンズの覗きやすさという意味ではそれなりに位置に寛容でブラックアウトがしにくく良好なのだが、後述する色収差によるフリンジが一番少なく見える目の位置というものが存在し、その位置がmm単位で結構シビアなので、アイカップゴムの形状と目の位置ぎめがこだわる場合は重要なのである。

また、ツノ付きアイカップなどのオプションがないので私はSwarovski EL 50mmのオプションを画像のように無理やり装着して使用している。 横からの光混入を防ぐと光害環境下での天体観測にはそれなりの効果がある。

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見口ゴムはこの部分に接着されている

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接眼レンズ側より。内面反射を徹底的に抑える丁寧な仕上げ

実視にて本当に残念な部分が、縦横の残存色収差である。どちらかといえば私はCA sensitiveな方ではあるが、昨今のED HD化双眼鏡が増えて来た状況からすると気にしだすと気になるレベルだと思う。

ピントが合った部分は、正確には縦の色収差は消える(見えない)。ただし、それは接眼レンズに対して上下左右にただしく瞳の位置があった場合である。 月など見た場合、中央でフリンジが消える場所が瞳の位置で存在するが、かなりmm単位以下でシビアである。
また、裸眼でアイカップを起こした使い方では私(顔が平たい族では無い方なのだが)の場合ジャストのアイポイントが僅かに奥まってしまい、周辺光量落ちしてしまう。硬いゴムカップを目の周辺で無理に押し付けるとベストポジションに出会えるという痛い状況である。メガネ使用者の場合でも、ベストポジションの保持が容易かどうかを確認の上購入された方が良いと思う。

横(倍率)色収差は若干ある方だが、平面な景色を見る際にはフラットナー光学系が良好に効いているため、周辺まで気持ちの良い像を結び、歪曲補正も良好である。(RB effectはパンしてもあまり気にならない) しかし、遠近の距離が視野内に同居する場合、例えば木立の前後でボケた像の縁に過剰な紫・黄色のフリンジが見られるため空間的な美しさを著しく損なう。
このあたりは色被りをしているにせよ10x42LISの方が良好である。

肝心のブレ補正能力であるが、10倍と14倍を比べたところ絶対的な補正角に違いはないようで十分に作用する。なお、14倍も思ったより視野が明るく実用になる。

重箱の隅的な解像力の部分においては三脚に設置した場合と、手持ちで補正がかかった状態では違いが明らかにわかる。手ぶれ補正では通常モードでもPowerモードでも同じく、大きなブレも微小なブレも対数的に縮小はするが、ある角度範囲内に入っていればそれ以上追い込まないような制御をしている様に見える。
ブレて見えない事がまず正義というコンセプトで、確かにそれはそうなのではある。しかし、Swarovision ELなどで、ブレてもため息が出る様な像質を経験すると複雑な気持ちになる。
結局は両方持っていくか、三脚を持ち出すということか・・。

 

と言いつつも後日、5等星の見える夏の天の川で使用したが、浜辺に座って2時間ほど存分に堪能できた。3cmという光量の不足は空のコンディションさえ良ければ補償され、十分な手振れ補正能力に鑑賞品質自体をサポートされる。 

 

手振れ補正機はやはり一家に一台の必需品だろうか。

 

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