ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

珠玉の逸品 五藤光学 GT-M518 

五藤光学 創業90周年記念の単眼鏡

 

マニア目線でみたこの単眼鏡の実力はいかに?

 

まとめ
実際に屋内、博物館、観光地巡りからハイキングまで様々なシーンで使用した。
「基本設計的」には素晴らしく、単眼鏡としては素晴らしい見え味のポテンシャルを持っている。しかし、あらゆる場面でそのベストを発揮させるノウハウがもう少し必要かも?

(と書いたが、単眼鏡の用途が通常屋内が主であることを考えれば、本レビューはかなり意地が悪いと言えるかもしれない。その用途のみで言えば、GT-M518は満点に近い)

五藤光学が設計から生産まで行なっているとは全く思っていないが、どうも設計から生産側まへの流れで「噛み合ってる?」「作り慣れてないんちゃうの?」と思うというのが感想。
 
物そのものの品質は高く、品質管理もしっかりしている。では何が課題か?

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付属のポーチとストラップはしまいこんで、ストラップは早速ベジタブルタンドの革製に変更。 使い勝手も高級感も増す。

ストラップの取り付け金具位置は、紫のリングの横にあるゴムリングを緩める事で360度任意の場所に動かせる。 この金具位置が回せることが、後で述べる使い方による見え味に大きく影響する。

購入後、室内で最初に使用した際はその非常に整った像に感動した。
視野全体の明るさにまず気がつく。8x25,10x30機より計算上でも明るいのだが、体感上でも明視では結構明るい。 良好な直線歪曲補正と像面湾曲の少なさ、周辺のエッジにかけてなだらかに像が崩れていくが、色収差の少なさとあいまってとても品がある像。
そして、そのテイストが独自である。
Nikon 5x15DやVixenの高価格機のように一見あっけらかんとコントラストが高い傾向はあるが、ハイライト側が飽和したようなプラスチッキー描写にならず、Zeiss機のようにしっかり物の質感が伝わってくる。視野の着色が少なくニュートラルなカラーバランスも特筆すべき点だ。


見えるもの全てが情緒いっぱい艶やかという風ではなく画像に一定の節度を持っている。西欧高級機と日本の中間的な感じである。

陽の出ている日中の屋外に持ち出すと、屋内での感動があまり再現しない。
中遠距離は苦手なのかと疑ってみる。
小型で鏡筒が細いので、三日月状のグレアが出やすいのには気が付いていたが、条件によっては視野の半分以上をグレアが覆ってしまうことも。

内部の所見では、強い光源が入ると、対物レンズの内側抑え環、プリズム抑え環、プリズム側面(そもそも黒色塗装がなく、接着剤で止められている部分も光る)、プリズムエッジ部などが反射してグレア・ゴーストを発生する。

毎度のことであるが、分解して黒色塗装を施すとかなり改善する。

鏡筒内の絞り環に相当する部分は、普通の設計ではナイフエッジにしたり、接眼側から面として光らないようなんらかの工夫をするのだが、本機はその詰めが甘い。プリズムエッジも面取りがされており、そこが逆に真っ白く光っている。内乱光を生みやすいプリズムサイズの小さの制限に加え、プリズム側面をコバ塗りせず、接着剤でホルダーに固定している面積も広いため、その部分は後からでも塗れなくなってしまっている。 結果として強い光の屋外では像が厳しく言うとちょっと冴えない。

それでは、分解せずに使用方法で屋外でのグレアを多少軽減できる方法がないかというと、実はある。 フードを作って巻くことが手っ取り早いが、格好があまり良くない。

画像3枚は接眼側から、接眼レンズのピントリングを回転させ内部に見えるルーフプリズムの屋根頂部を目印に、上、横、下の3ポジションで撮影したものである。
屋外での光源が天空の上からという前提の場合、プリズム頂部を上にして、プリズム側面にダイレクトに光が当らないようにすれば視野内のコントラスト低下を軽減できるのである。

このために、ストラップ取り付け金具の位置をプリズム頂部と合わせて、観察時に取り付け金具の位置を目印に常に真上(または強い光源がある方向に)にする。 そして観察時のピント合わせは、接眼レンズ側を回さずに、対物レンズ側を掴んで回す必要がある。
この使用方法で軽減を図ることができる。

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ルーフプリズム頂部が真上のポジション(内面反射最小)

 

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ルーフプリズム頂部が横のポジション(側面内面反射が大)

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ルーフプリズム頂部が真下のポジション(内面反射中)

 

内部について更に言うと。
スムースなヘリコイドはグリース量が過多で、既に対物ユニット裏や無関係な部分に回り込んでいた。グリースも旧ソビエトレンズのような若干臭いが強いもので、後々の揮発が疑われる。
プリズムの組み立て時にプリズム稜線をぶつけて微小に欠けた個体も見受けた。(生産作業性を考えた鏡筒の作りをしていないので、プリズム装着時にぶつけたと推測)

図面上では光線追跡も含め机上で済むのだが、内面反射処理や実際の製造現場に流した際に何が起こるかは、経験と実物のすり合わせが重要で、そういった仕事は泥臭く得てして社内で評価されにくいと伝え聞く。どの業界でもあるある。

ここまで辛口に書いてはいるが、手を加えた後のこの単眼鏡にはもう一本買おうかと思うほどの愛着がある。そして見える像質には本当に惚れ込んでいる。

 
願わくばこれらの弱点を修正した双眼鏡バージョンも検討して欲しい。

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対物ユニット裏面に潤滑グリス回り込み

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ヘリコイドグリスがリッチすぎる・・・

 

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