ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

RICOH PENTAXの良心 気になる双眼鏡 AD 8x36 WP Part.1

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PENTAX AD 8x36

 

超まとめ

・実売1.5万円のダハプリズム双眼鏡としてはコストパフォーマンスに優れる

・Made in China でありながら、中華ブランド製品よりもQCは良好、アクセサリーを含め品質が半段高い。

・実質40mmダハに近い大きさと重さ。長い鏡筒デザインと重量は携行性をある程度犠牲に。その対価は光学性能の良さに現れている。

・高級双眼鏡の見え味のエッセンスを、中心のごくごく狭い視野範囲で再現。

・細かい事さえ言わなければ、観劇・星見・バードウォッチング、あらゆる用途に気軽に持ち出せ活躍。

・強い倍率色収差、軽度な軸上色収差、コマ収差と非点収差あり。

・カラーバランスは「一見良好」だが低い赤の透過率を何とか帳尻を合わせている

 

普段、量販店の店舗に並べられているクラスの双眼鏡で見え味に心動かすことはあまりないのですが、PENTAX AD 36は店舗で手にした時からとても好印象でした。

カメラレンズやカメラと比べ双眼鏡の中古市場の規模や流動性の低さから、ある程度のブランドと価格水準以下の製品を買うと、手放す際の金銭的減耗が激しいのでそのうちにと思いつつ今日まで後回しになっていました。

 

まず外観ですが、長めの鏡筒で少々大柄です。EDレンズを奢らない分、対物レンズのF値を長めにとっているのではないかと思われます。

大きめのボディですが手に持ち構えた際のホールドはとても良いです。例によって脇を締めずに鏡筒を左右から「つまみ持ち」をするとすぐに不安定さと腕の疲れを感じます。しっかり掌で下から支え持ちましょう。 外装ラバーは中華ブランド製品を思い起こす同様な作りです。しかし同種製品よりもQCや素材の選定が行き届いているようで、外装ラバーの雑さや臭気の発生なども無く洗練されています。

鏡筒内部の管理もしっかりされていて、オイルの飛び散り、プリズム曇りや異物なども無く、通常許容範囲の僅かなチリのみでコントロールされていました。

 

当初店舗で見た際、プリズムや内部の反射防止対策が価格のクラスを超えてしっかり施されていることに驚きました。

対物レンズ裏のインナーフォーカス(IF)ユニットには、巨大な内筒とさらにその全てに遮光ネジ切り(施条)が入念にされていて、「分かっているなぁ」と感心させられます。

プリズムハウスやプリズムの反射防止も適切で、アイピースの見かけ視界が抑えてあることも加わり期待値は高まりました。 

 

ところが、実際の晴天下フィールドでは画像のように反射防止塗装を入念にされたプリズム側面と、対物レンズ、IFユニットの一部エッジが斜めの強い光で光って淡いグレアとして視野に入り込んでしまいます。

その程度は期待した程抑え込まれていませんでしたが、それでも他機種に比べればクレセントグレアについては及第点かと思います。

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PENTAX AD 8x36 WP プリズム・対物前方のグレア原因箇所

 

それよりも、強い晴天下での使用は、何故か視野全体にごくごく淡く薄いベールをかぶったように白っぽくコントランスが低下する見え方をします。(かなり限界的な部分での話をしてますので、普通の方が気にされるレベルではないと思われます)これでも同じ価格帯の他の双眼鏡に比べれば上等の部類ではあるのですが、10万円以上のクラスと比べるとその現象というか症状が顕著に分かります。

 

LEDライトで内部を入念に観察すると、内面反射によるグレアというより、主にプリズム部分での拡散、もっと突っ込むとコーティングというより、ダハのミラー面、もしかしたらプリズムの硝材自体で光が拡散しているような抜けの悪さを感じました。 上級機ではこのプリズムの光の抜けがもっとスカッと艶を持って綺麗に抜けて見えます。

ただ、普段使いをするシチュエーションではそれがコントラストを少しコントロールしたような、却って「視野が明るく感じる」というマジックもあり、それはそれでありかと。

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ボケの感じは比較的良好。自然観察での色再現もナチュラル

 

次回Part 2では人工星に内外焦点像と、天体での使用インプレッションなどをお伝えします。