ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

双眼鏡 内面反射対策についての誤解

双眼鏡のレビューサイトや、個人のblogなどで双眼鏡について様々なレビューがなされていますが、その性能評価の一端として内面反射について言及されることが多くなったように見受けられます。自分も購入検討の参考に役立てていますが、時にその評価と実用にズレを感じることもあります。


特にAllbinosのreviewなどでは、接眼レンズ側から筒内と対物レンズ側にかけてどの程度「黒い」かを観察、撮影しているようですが・・。

さて、例としてポロ、アッペケーニッヒの両機を同じように撮影したものです。
どちらが内面反射対策を徹底し、実用に影響が少ないと思われますか。

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キヤノン 32 IS ポロIIプリズムのアイピース側より撮影

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Zeiss ダハプリズム型のアイピース側より撮影

一般的な評価では、接眼側からある程度離れて内面に光る部分(プリズム側面や面取りの部分、臨界角外の漏光など)があるかを評価しているケースが多く、その意味では上記のポロタイプは「漆黒」に近く見え、もう一方のアッベケーニッヒの例ではプリズム内の各所に光る部分があるため、コントラストやグレア・ゴースト耐性に差がありそうに思えます。

ところが、順光下のフィールドで両機を使うと視野内のコントラストはどちらも良好です。

視野外から斜めに強い光源が入る場合に見られるクレセント・グレア(視野周辺にでる三日月状に広がる部分フレア)は両機ともでてしまいますが、このケースではポロの方が強く出てしまいます。添付のクレセントグレアの画像は、先のポロ機のものです。条件によって実視では容易に出ます。原因は、対物レンズとポロプリズム間のフォーカスレンズ群側面が光っているためです。

アイピース側に近づいて、若干斜めから観察するとわかりますが、アイポイントに近づくと光っている部分に目のピントが合わなくなるため、光輪がボケて三日月常に視野に被るのです。
実視のアイポイントにできるだけ近づくと、筒内に実フィールドの明るい部分から反射して影響を受ける部分が見えてきますが、接眼レンズから離れて観察した時には隠れて見えていない部分となってしまいます。

経験上、これらのグレアは、プリズムの側面からインナーフォーカスユニット、対物レンズやその枠という順に視野への影響が対物側に行くほど大きくなる傾向があります。(構造にもよります)

単純にアイピース側から観察して、黒いか、光っているかだけでは必ずしも
実フィールドでの結果に対応しないという事を考慮されるべきと思います。

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視野外から光線が入る過酷な状況下で見られるクレセントグレア

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グレアの原因は、ポロの内部に環状の光る部分。アイピースに近づき斜めから撮影。

 

視野外からの強い光が、鏡筒内に斜めに差し込み、鏡筒内面やレンズ側面に反射して
観測者の目の視野に入り込むことを一般にフレア、グレアと呼んでいますが、視野周辺にボケて拡散した三日月状の「クレセントグレア」について近年海外の掲示板で興味深い議論がなされています。
特にSWAROVSKI EL SWAROVISIONの32mm機についての酷評です。 42mm機以上と比べて、鏡筒径が小さい分内面反射に物理的な制約があるのは事実ですが、その量が酷いという指摘です。
興味深いのは EL Swarovision(SV)と その後のField Pro(SVWB)で改良がなされたという意見、違いが無いという意見、それとそもそも何でも酷いグレアは経験したことがないという意見。 私個人の比較経験では EL 42 SVWB < CL 8x25 = CL Bright < EL SVWB 32 で、

やはり32mmが反射が多いと感じました。鏡筒径がより32mmより細い CL 25mmや Bright 30mmの方が程度は少なく、EL 32mmはインナーフォーカスレンズユニット周辺が光ってしまっているように見受けました。

その後 EL 42, EL 50, CL Bright 30mmを使用してあることに気がつきました。
筒径に余裕がある42mm以上では顕著では無いのですが、CL Brightでは実際の強い光源下のフィールド下ではやはり特定条件でうざったいクレセントグレアが頻度高く出てしまうことでした。 しかしある時、ふと引き出しアイカップをいつもは裸眼でフルに引き出して使うところを、3-4mm手前で止めて使用すると、グレアが出る頻度が下がることに気がつきました。
クレセントグレアが発生する筒内の箇所が、覗く目のポイントで隠れるのです。

アイピースのアイリリーフ距離と、観察者が覗きやすいと感じる位置の幅の中でアイカップをある程度目の位置を固定させるガイドに使っていましたが、そもそもこの位置がグレアの出易さとも関係するとは今まで思いもしなかった事でした。


この事から、双眼鏡のデザインや仕上げから起因する内面反射以外に、観察者の個人差(器質の違い、クセ)も影響していると考えられるのです。

 

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