超まとめ
・「性能」の価値観が多様化した現在、双眼鏡の頂点とするにはいささか乱暴過ぎ。
・ Dialytでしか味わえない独自の世界観は確かに存在する。
・ 光と色の純度を保ち(+ブースト)眼へ届ける能力が異様に高い。
しかし筆者はDialyt 6x42 と 8x56がそれをさらに上回るとも考える。
1981-2004年の長きに製造販売された Dilayt 7x42 (後期はClassiCとも表記)
製造終了から世界的に何度かブームになり中古市場で高騰した事もあったが、双眼鏡業界に近年起きているある種のパラダイムシフト(高解像力、高コントラスト化)の中で、この旧機種がどのような位置付けで今現在評価すべきかを考えて見ましょう。
美辞麗句を並べた転売目的のBlogではなく、冷静に。
玉数はT*のみから含めれば世界中にユーザーがいるので、入手性は難しく無い。
しかし、状態が良いものはなかなか無い。使い勝手や光学的性能への満足度がある程度バランスが取れて高いことからか、ハードに使われているケースが多いということと、以下に示す造作・構造による課題からベストの状態が維持しにくいと思われる。
構造面において完全防水仕様では無いが、対物、対物ジョイント部、接眼レンズ第一面、アイピースユニット摺動部にシーリング部材が適切に使用されており飛沫防水程度は確保されている。ただし、Zeissは現在販売されているConquest HDをはじめとする機種も同様なのだがシーリング部材の気密性向上にグリースを使用しており、これが経年を経てグリース成分の双眼鏡内部への侵入・蒸散をおこしてしまう。 3x12B でも指摘した内部光学系への曇りを起こす可能性がある。実際この機体ではプリズムハウジング近くにまで茶褐色のオイルが入り込んでプリズムに影響が出ていた。
3x12Bと同じくアッベケーニッヒプリズムユニットは保持フレームに接着剤で固定されているため、二つのプリズムの相対面が汚れると事実上拭けない。また、Zeissの正規修理ではこのプリズム部分はユニットごと交換となり非常に高額な部品代を請求される。
また、構造的にインナーフォーカスではなく、接眼レンズが摺動する方式のため
プリズム部に空間的につながる部分で接眼レンズのグリースが使われている。これも曇りのリスクになりえるが、Zeissの正規メンテナンスにおいては最小のグリス使用量に抑えているようだ。
接眼レンズ側のT*コートが耐久性がそれほど高く無いのか、スクラッチやコートやけを起こしている個体も多い。 ちなみに接眼レンズもZeissではユニット丸ごとの交換となり、日本では1個35000円程度する。(2019年時点での情報です)
ちなみに8x56 Dialytが2群3枚のケーニッヒタイプだったので、同じ光学系かと思っていたのだが分解すると非常に厚みのある視野レンズ(おそらく1群2枚)を含む3群5枚構成 (訂正 July.2021 改めて視野レンズを観察したところ、反射面は2箇所、拡大観察でも1群2枚のセメンテッドではなく、1枚を2つの角度で成形されている。よってトータルで3群4枚と思われる) 焦点距離は 約20mmであった。 このアイピースを仮組みして天体望遠鏡で地上風景を覗くと、Dialytのエッセンスが入った見え方になるのには少々驚いた。そしてF値の長い入光に対しては、周辺像が一気に改善する。
閑話休題。
July 2021 視野レンズの情報2枚を追加