ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

賞月観星 Pleasing HR 6.5x32 WP

 

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内面反射対策強化のため剥かれる

センターフォーカスで6.5倍の低倍率に加え約5mmの瞳径という星空観望にも理想的なスペック。
実際の製造は中国 のOEM企業製と思われ、当該と思われるページでは同機種のベースモデルが紹介されている。日本で販売されている望月氏のモデルはカスタマイズ注文と想像され、コーティングやレンズがupgradeされている。望月氏のBlog Q&Aでは、コスト削減の目的でありものの器を用い、内部はオリジナルとの説明をされている。


実際の性能は、格上の3-4万円代の双眼鏡ですら持ち合わせていない突き抜けた部分と、後述するいくつかの欠点が混在した、マニア必携の不思議な機種。というのが総合見解である。

外観
ラバー外装で、仕上げもMade in China他メーカー品と同程度の品質。多少ラバーが臭う。ラバーの仕上げに僅かな雑さが見られる。
対物・アイピース両方ともパープル系色のコーティングで、筒内をのぞくと高級機種のような「深い水の湛えた井戸底を」みるような感じではないが上質と思われる。 内部光学部に製造汚れや拭きむらは無いが、僅かな異物混入はあり。

機構
センターホイールはスムースに動くがグリスがかなり重めである。フォーカスは鏡筒内の1枚のフォーカスレンズが前後する方式。フォカースリング中にある樹脂製コマ部品に遊びを持たせてあり、この遊びを埋めるために高粘度のグリスを使用している。現在はこの部品を真鍮製にアップグレードされていると聞いている。 アイカップのツィスト動作やセンター軸の動作はかっちりしている。
右側鏡筒に接眼レンズを動かす視度補正を備えるが、0点クリックがない(指標はある)ため夜間は判別しづらい。

実視
中心結像が非常に固くカッチリしており、物の質感と艶の再現に秀でる。これが本機種の最大アピールポイントである。マイクロコントラストを高めエッジを強調する現代的な見せ方とは違い、Dialytと旧Trinovidのちゃんぽん的とも言える解釈もできる。
カラーバランスは僅かに黄緑にかたよるが、明るい視野内の見え方にコクのある味付け程度で好ましいレベル。 色彩の彩度は中庸より若干強めにでるが、コントラストが強めではないので素直な描写である。
中心像の非常なる解像力はEDレンズとプリズム製作精度によると思われる。色収差については、中心はほぼ色消しに成功している。周辺にかけて倍率収差はなだらかに発生しているが、白い対象物でもフリンジは非常に軽微である。 歪曲はクラシックで素直な軽い糸巻き。これによりパンニングによるグローブエフェクトは起きにくい。

接眼側にフラットナーレンズや非球面を採用していないと思われ、大きな欠点のひとつとして周辺像の崩れがある。
星空の星像は中心から半径30%が点像で周辺にかけての崩れがはげしい。周辺は非点収差(隔差)が強く出ており、ピントを前後させると星像が縦線・横線という収差の教科書的な見え方をする。強い非点収差のため、像面湾曲の有無はよくわからない。

見掛け視界52-53度と広くはなく、前述のように良像範囲が狭いので天体用に向かないと一見思われるが、実際に星空を眺めると不快な感覚は全くない。
中心の星像が固く、しかも星の色と煌めきを感じられるのと、コントラストが良く微光星がまばらにばら撒いた感じがよくわかるのでとても楽しめる。
月面像は倍率の関係で小さいのだが、海の部分のぬめる質感や無数のクレーターが細かくチリチリ見えてくるところが楽しめる。色収差のフリンジも気にならない。

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フォーカスユニット内筒と自作反射防止の比較


天体使用においては、月が出ている時にだけ不具合がおきる。月から視野を外した30度前後あたりで、筒内光反射が強くおき視野の半分ちかくをグレアで覆ってしまう。
これはフォーカスレンズユニットの内面反射防止が不十分な為で、接眼レンズやプリズム、はたまた対物レンズのコバ塗りまでフォーカスレンズユニット部以外の内面反射対策は
正直他機種と比べてもかなり丁寧に行われ、コーティングの良さと相待って良好なコントラストを描いているにも関わらずだ。画龍点睛を欠くと言うか・・。
その後、日中の使用においても逆光ぎみや視野外に強い光源がある場合に同様の現象が起きる理由が、このフォーカスレンズユニットの内筒処理が原因であることがわかった。

分解の過程はそもそも分解行為が保証規定外になることや、窒素ガス封入がなくなることなど、デメリットやリスクが大きい為割愛させていただく。

この双眼鏡に一つ言えることは合理的なコストダウンがなされた構造・作り・部材の使用(接着剤や樹脂)によるところからメンテナンスのし易さをあまり考えられていないと思う。 
まぁ、Swarovskiでさえも故障の程度によっては予め組み立てておいたユニット鏡筒とまるごと交換しているので、隅々まで分解再調整できる構造は必ずしも必要ないのであろう。

懸案の視野外強光源での内面反射は、フォーカスレンズユニット内筒の黒色塗装に問題があると見ていたが、実際には黒色の樹脂仕上げそのままに塗装がされていなかった。
対策として自家製反射防止シートを筒内に挿入した。

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内面反射対策後


その効果は絶大であった。
前述の月の影響はほとんどなくなり、日中・室内などの条件でもコントラストが向上し
この光学系がもつポテンシャルを遺憾無く発揮できるようになった。
例えるなら Zeiss 3x12Bで見える、室内オブジェの艶やかさやしっとりした見え味を更に明るくしたような・・。最新のPENTAXやSwarovisionのようなニュートラルなカラーバランスに突き抜けるコントラストなどとは違う、なかなか味わい深い見え方である。

 

他機種に押され最近は常用していないが、子供との探鳥会や自然観察会に行く時など活躍している。思い出した時にこの双眼鏡をのぞくと、なにか安心感がある。

 

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