ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

レンズクリーニング どうする? レンズペンを試す クリーニングペーパーも。

 

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日本ではハクバ写真産業さん扱いのレンズペン

LENSPENを試す

レンズクリーニング、特にネットや教科書に書いてあるレンズ清掃方法、わたし、大の苦手です。いわゆる「先のとがっていないピンセット等に、専用クリーニングペーパーまたはシルボン紙を巻き付け、先端に無水エタノールまたはクリーナーを少量浸し、レンズ中心から円を描くように周囲に素早く回し、息を仕上げに吹きかけたり紙の同じ面で何度も拭いてはいけない」「実際の製造現場では洗いざらしの木綿に柑橘類の木の専用棒を複数サイズ用意し巻き付け、エーテル類を使用・・・熟練に2-3年はかかる」これは吉田正太郎先生の本だったかしら?

 

レンズペーパーやシルボン紙を購入して練習を繰り返しましたが、レンズは傷つけないにせよどうしても拭きムラや汚れ残りが僅かでもどこかに残るのです。そして大量に残った紙を別の用途に年単位をかけて消費してきました。

アイピースや、カメラレンズ、フィルターなどサイズによる難度の違い以外にも、コーティングやレンズ表面自体の磨きのスムースさ、はたまた最近では撥水系コーティング付きのレンズ面はムラなく拭きあげるのが特に難しいと思います。

 

そこでお試ししたのがLENSPENです。 カナダのParkside Optical社によるライセンス品で日本ではハクバ写真産業さん扱いです。Web pageを見ると開発経緯が紹介されています。窓ガラスを新聞紙で拭くと何故綺麗になるのか? それはインクに使用されているカーボン が優れた吸油性と汚れ吸着性があるから・・という面白い着眼点です。

レンズペンに使用されてるカーボン粒子がどのような性状か明らかにされていませんが、世にある活性炭粒子ならば疎水性特性をもち多孔質構造による広大な表面積で特に親油性の高い物質を多く吸着可能です。臭いを吸着する備長炭や冷蔵庫に入っている脱臭剤でも利用されてますね。

 

レンズペン フィルタークリアを試しました。使用法と構造は至って簡単・単純。

 

1) 使用前にレンズを傷つける可能性のあるゴミをブロアー、またはペンの反対に装着してあるブラシで払う

 

2)円形のセーム革製クリーニングチップ(既にカーボンパウダー充填ずみ)で優しくレンズ面を円を描きながら拭く

 

以上おわり。簡単です。

 

早速、双眼鏡のアイピース部分を拭いてみました。

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クリーニング前 まつ毛などの皮脂は眼鏡非使用だと結構付きやすいですね

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ブロアー後にレンズペンで優しく弧を描くように

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皮脂、指紋はとてもに綺麗に除けます。

非常に簡単に指紋やまつ毛からの汚れを除去できます。 クリーニングチップのセーム革由来のダストと仔細に見るとカーボン粒子が少々残りますが、ブロアーのひと吹きで飛びます。

 

 

では、他の汚れはどうかといいますと

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少々ピント合ってませんが、水滴またはタンパク系汚れ跡かと思われ

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レンズペン一回使用後 汚れは残ります

説明書にもありますが、水滴ムラなどは息を吹きかけてクリーニングを繰り返すとしています。カーボンが吸着しやすい油系汚れは得意ですが、水やタンパク系の乾いてしまっている汚れには強く無い模様です。実はこういった汚れは無水アルコールでも取れにくい事実があります。 というのも100%に近いアルコール類やエーテルは極性が低い溶媒であるため、こういう系の汚れが溶けにくいのです。 ですでの、私はレンズ上の汚れの質をみて20%の水分を含む消毒用エタノール(またはイソプロパノールを含まないよう自家調製)を使い分けています。

 

レンズペンはこういった特性を踏まえて、とくに外出先での使用や、付いてしまった汚れを素早く簡単に取り除く用途に便利だと思います。携帯性もいいですね。

 


 

 

ペーパーについて

さて、王道のレンズクリーニング方法を習得できなかった私は普段どうしているかといいますと。ブロアーを使用したあと、ざっくりティッシュペーパーに無水エタノール または 消毒エタノール濃度を使い分けしています。

市販のティッシュは発塵と光学面への残留、紙の硬さや紙自体から溶出していると思われる汚れの残り方に製品自体のばらつきがあり、経験的には大手ブランド品はレンズ清掃にコンスタントに使用できる(埃のことは除いて)と思います。

こういった紙に溶液を浸して大雑把に拭いてしまう方がムラなく拭けます。しかし、これを推奨していない理由が吉田先生の著書にヒントとなる記載があり、光学面に触れる液体の量が多いと、レンズ金枠の隙間から内部に侵入してしまい、特に水分を含む消毒エタノールでは残留時間が長く、その影響があるからだと思われます。(カビの温床になり得る等)

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コスパ、入手性抜群の我らがティッシュペーパー

Twitterにも書いてしまったのですが、生物・化学実験系では絶大な人気をほこる キムワイプ を使用していた時期があります。これはガラス実験器具を拭き上げる際、紙の発塵を抑た優れたワイプ性を発揮する優れものです。ペーパー自体が硬いため、レンズを傷つける恐れがあると言われています。経験上、しっかり溶液を含ませ、最近のハードコーティングを施された光学面に対しての清掃では問題ありませんが、内部プリズム面や特にオールドレンズのコーティングには慎重を期します。柔らかい面には容易にペーパーによるヘアスクラッチを生じてしまいます。 その点では万人様にお勧めはできず、私ももっぱら双眼鏡のラバー外装やアイカップの清掃用に現在は用途を絞っています。

 

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最近のお気に入り ケイドライ ワイパー

そこで、最近のお気に入りは、クレシアの「ケイドライ  132-S」に移っています。

発塵性は市販ティシュペーパーと、キムワイプ の中間ですが、紙の柔らかさは抜群です。

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ケイドライ 132-s使用

発塵については特に、ゴム面への清掃にはキムワイプ ほどの残らなさはありませんが

ティッシュペーパーよりは少なく扱いやすいです。

課題はコストですね。

 


 

 

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ブロアーのメンテナンスは意外な盲点

最後にブロアーです。 使用しているとブロアーの空気を吸い込む入り口に汚れ溜まりが見えたり、時にレンズ面にブロアーから汚れ・油滴のようなものが飛んだ経験はありませんか?

そうです、一定期間の使用で空気中の埃や汚れがブロアーゴムの内部に相当量付着しているのです。ゴムも疎水性が高い材質であるため、油性の粒子の付着がしやすい側面があります。

試しに中性洗剤を溶かしたお湯で、ブロアーの出口側を押さえて内部を洗浄してみてください。真っ黒の液体が出てくるはずです。 私の場合は、水道水でリンス後、内部に水が残るとカビの原因になりますので、無水アルコールを少量含ませてその後入念に空気を入れ替え乾燥させています。

 

以前、某大手カメラメーカー在籍の方とオフ会で出かけた際に、彼のクリーニング方法を見たことがあります。ブロアーの気合の入れ方から違いました。常人の吹きかけ量と全く違います。そして、先の丸い細いプラスチックピンセットに、レンズペーパーを器用に細くくるりと巻き付け、円周上に綺麗にレンズを軽く拭き上げていました。 

あれを真似できる気が今でもしません。