ジャングルさんの双眼鏡・単眼鏡レビュー Binoculars and Monocular Review

素晴らしい銘機から普通機まで、双眼鏡・単眼鏡についてその覚書

手持ち双眼鏡の最高峰 Swarovski NL Pure 10x42 (2)

NL Pureを使って与えられる視界体験は一言で「素晴らしい」です。

これを動画や画像または文章で伝えるのは非常に難しく、ある程度双眼鏡やスコープの経験がある方が使用してわかる「領域」もあるのかなとさえ考えています。

動画系レビュアーさんが双眼鏡の歪曲や色収差、透過率、内面反射やコントラスト、解像力や像の均質性について詳細に伝えるようになりましたが、彼らもこの「領域」をどう伝えるのか苦労しているようです。

 

ハイクラス以上の双眼鏡、またはクラシック製品の一部双眼鏡にはこの領域が見えだしてきますが、私はこの特徴のひとつに「物の佇まいが伝わる能力」がある事と考えます。これは、双眼鏡を使う際、まるでその場にいるかの様な感覚を覚えることがありますが、それをさらに超越した、見ている物体(Object)そのものの佇まい・なにか本質を感じられることです。

 

残念ながらこういった特徴は、天体用途ではあまり特徴が出ない or 必要とされない能力のようで天文向けよりも自然観察、はたまたジャニオタをはじめとする芸能や芸能人ライブ観賞に発揮・未知の体験を切り開く可能性があるのではと。

 

さて、NL Pureで得られる素晴らしい視界体験については、既に各国のユーザーから絶賛のコメントやレビューが多数出ています。
ここではその素晴らしい品質については後回しにして、他所では言及されていない弱点について書きたいと思います。

 

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クレセントグレアの原因 プリズム側面


大きく2点。
1.プリズム側面から生じるクレセントグレアが比較的顕著に出現する(視野内外の明暗差が激しい状態、木立での観察や晴天の天空や太陽が視野外に入るケース)
2.接眼レンズのアイポイントが若干シビアで、視野周辺を見回す際に視野の一部が翳る「隠元豆効果」および完全ブラックアウトが起きやすい

まず、意外だったのは1のクレセントグレア。晴天のフィールドですぐに気がついたのですが、条件によってはクレセントグレアが視野の半分以上を覆ってしまうケースがあります。これはEL SV の42mm機より顕著で、問題になっていた32mm機レベルかもしれません。プリズム の側面は塗装処理がしっかりされているのですが添付画像の様に斜め視野外の強い光線(面)にかなり影響を受けます。
また、このグレアが見えるアイピースのアイポイント位置はアイカップを完全に引き出し切るいわば眼レンズから離れるほど見えやすくなります。広角アイピース採用による視野環の拡大の影響でしょうか? 対策としてアイレンズ側に近づくと光っている部分が隠れて軽減されますが、最良アイポイントから外れるに従って周辺を見回すときのブラックアウトが起きやすくなります。 また、筒先に6-7cm長さのフードを設置すれば軽減できそうです。なお、フードの内面処理が単なる黒色塗装だけだと却ってグレアが増加します。

2.のブラックアウトはアイポイントに瞳をそえて、そこから眼球だけを動かして周辺を見回すと起きます。ひとつはアイピースの瞳の球面収差補正に若干難がありそうなこと、それと見かけ視界70度超の広視界アイピースに潜在的にある覗きにくさと思われます。 明るい昼光下で特に顕著で、瞳孔が開く暗い環境では軽減します。また、FHRを使わずに視野周辺を見回す時にに頭を動かすか、双眼鏡自体を動かして覗く目の位置をわずかに動かすいわば「今までどおりの方法」であれば現象は起きにくくなります。


はじめ、FHRで頭と目の位置を固定して眼球を動かす度に不快な部分・全部のブラックアウトがおきるので閉口しました。FHRで目の位置を固定できるので余計に眼球だけを動かそうとしてしまいます。 途中から「眼球だけ動かして際周辺を見ようとしない」「クレセントグレアが見えてもアイポイントを眼レンズから離す方にアイカップを調整する」ということで対処しています。

後日、日中で瞳径が2mmと狭まっている場合とサングラス着用で瞳が開いている場合とでブラックアウトを比較しましたが、やはり瞳が開いている方が光束を拾いやすくブラックアウトが起きにくく、実際の夜間の星空でも同様に見やすさが向上します。

このあたりはニコンのWXの方が眼の生理学を理解したアイピース設計をされていると思います。

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